紳士服小売り大手のAOKIホールディングスが、3月4日払い込みによる公募で103億1800万円もの自社株式の処分を行った。普段あまり聞き慣れない自社株の処分だが、同社は2月17日に公募のほか、第三者割当による自社株式の処分や売り出しを発表している。

発行済みの自社株を市場から買い戻す「自社株買い」に対して、今回のAOKIホールディングスのように、保有している自社株を再び市場で売却処分することもある。

自社株買いは内部に資金があっても、特に使い道がない場合などに実施されることが多い。株主からの余剰資金の分配圧力が高まったり、投資家から買収の標的にされる可能性が高かったりするからだ。

自社株買いをすれば、市場で取引される株数が減るため、1株当たりの価値がアップするので株価が上昇しやすくなる。その結果、買収されにくくなる効果が期待されるようになる。また、株価が好調なときに自社株式を取得すると、株主は高い値段で株式を売ることができて、株主への利益還元にもつながる。

一方、自社株売りの最も大きな目的は設備投資などに当たっての資金調達であり、AOKIホールディングスも紳士服のほかにカラオケ、結婚式場などの多角的な店舗展開に回す方針を示している。また、一部は借入金の返済にあてて財務体質の強化を図る考えだそうだ。

自社株売りは、株価が高いときに実行するほど多くの資金を調達できて有利になる。株価が高いということは一般的に景気がいいときで、事業拡大のチャンスである。そうしたチャンスが広がっているときには資金調達の必要性が高まり、自社株売りで有利な資金調達をする環境が整いやすいともいえる。

ただし、自社株売りでは保有している株を市場に放出することになるため、市場に流通する株数が増え、株価が下がる要因にもなる。