ちなみに市場株価法では算定機関による大きな違いは見られなかったものの、DCF法では日興証券が(H2O1に対して)0.51~0.81、KPMGは0.402~0.752と、かなり差がある。これは将来の収益をどう予想するかによる差にほかならず、「将来のことはわかりにくい」ということを端的に表したものといえよう。

では、対価として自社株を使った株式交換の会計処理はどうなるか。A社がB社を完全子会社にする場合を見てみたい。

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自己株式を利用したM&Aの会計処理の例

A社のバランスシート(B/S)は、借方(左側)に資産が100、貸方(右側)に諸負債40、その他純資産70、「自己株式」がマイナス10だったとする(図表参照)。株式交換を実施した場合、資産には子会社の株式10が加わり、右側の自己株式のマイナス10が消える。

これを見てもわかるように、M&Aでは金銭を使って行うこともあるが、自社株を用いた株式交換なら、お金の動きは一切ない。つまり資金を必要としないのだ。これが株式交換でM&Aを行うことのメリットである。

イズミヤの発行済み株式は8529万1365株。これを「1:0.63」の比率でH2Oの株式と交換するのだから、発表時の終値で計算すると「8529万1365株×0.63×843=452億9739万円」もの資金が必要だったことになる。自社株も使いようによっては、かなり大きな経営の武器になるのだ。

ただ、自社株および新株の市場での流通量が増加することになるため、需給の関係から一時的に株価が下落する要因になることもある。実際にH2Oの株価は1月31日の経営統合の発表後、700円台に落ちている。

しかし成長目的でM&Aを行っているのだから、将来的に株価が回復、上昇する可能性も期待できる。あくまでも経営に効果的なM&Aであることが前提だが、株価が下落したときには安値で投資するチャンスともいえる。

(構成=高橋晴美 図版作成=ライヴ・アート)
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