瀧澤 直(NECラグビー部主将)
元気のいい人間ってのは頼りになる。ぼさぼさの天然パーマの頭。ラグビー・トップリーグ(TL)のNECの試合をみれば、つい新主将の動きを目で追いたくなる。存在感は抜群である。
愛称が「タッキー」。ファンから愛されるプロップの瀧澤直はいつも、からだの奥から天然の活力を発散している。変幻自在。走っても、タックルしても、スクラムを組んでも。
「だって、自分の好きなラグビーをやらせてもらっているわけですから。ぼくを受け入れてくれた会社への恩返しのつもりで、誠心誠意、がんばっているつもりです」
我が人生に後悔なし、きっとそう、感じているに違いない。早稲田大学の理工学部出身の変わり種は1年留年し、つまり5年間、ラグビーに没頭した。卒業後、いちどリクルートに入社したが、4カ月後、ラグビーをするため、NECに入り直した。
きっかけは、早大同期の豊田将万(コカ・コーラ)の日本代表の試合での雄姿だった。瀧澤が少しはにかみながら思い出す。
「豊田くんを見て、いいナって思ったんです。数千人の観客の中でプレーする非日常感というか……。みんなから観てもらえる存在っていいナと」
どちらかというと、自身の直感を大切にしている。7月の夜の10時半頃、卒業時に勧誘されていたNECの大学の先輩に電話をかけ、自分の決意を伝えた。数十分後、採用担当から電話をもらい、2日後には会って、ほぼNECへの転職が固まった。
「もうちょっと他人への迷惑を考えるべきなのでしょうけど、ぼくは選択する時に悩まないようにしています。自分に正直にリクルートに就職して、正直にNECに転職したんです。ラグビーから一度、離れたことも後悔していないし、4カ月で会社を辞めたことも後悔はしていません。ただただ、リクルートにもNECにも感謝しています」
どうせ一度の人生だから、後悔だけはしたくない。もしかしたら、今日が人生の最後になるかもしれない。でも、瀧澤はこう、考えるように努めている。
「自分の残りの人生の最初の一日という気持ちで生きています。何かの本で読んだコトバです。人生、あと何年あるかわからないけれど、今日は最初の一日なので、目いっぱいやりきることにしているのです」
昨季はトップリーグにフル出場した。もはや不動の「1番」である。ことし3月からニュージーランドのカンタベリー州「クルセーダーズ」に3カ月間、ラグビー留学した。3月下旬、相澤輝雄・総監督から国際電話を携帯にもらった。「主将指名」だった。
「指名を受けたとき、メチャクチャ驚きました。絶対、冗談だと思ったんです。でも押し問答のあと、“はい、わかりました”と。まあ、キャプテンになったからといって、とくに何かが変わるわけでもありませんから」
まったく自然な口調だった。でも、体内の闘争心に火がついた。やるときはやる、のである。「優しい阿修羅」のような風貌の目の輝きが増した。
「個人としても、チームとしても、目標は優勝です。ただチームに貢献したい」
趣味は読書とオートバイ。独身の27歳。独特のオーラを醸し出す男らしい男である。タッキーが走れば、嵐を呼ぶぜ。