1789年と2026年

フランス革命の引き金は、国家の財政だった。1789年、度重なる戦争などで借金を膨らませた王政は、財政を立て直すため、長く開かれていなかった三部会を招集した。そこから、革命が始まった。

トクヴィルは『旧体制と大革命』で、革命前のフランスでは、あらゆることが中央の行政に委ねられ、人々は何事も国家に期待するようになっていたと指摘した。そして革命は旧体制を壊したが、国家にすべてを委ねる中央集権の仕組みは、むしろ受け継がれ、強められた。

2026年のフランスに、1789年がそのまま繰り返されると考える必要はない。現代のフランスには、選挙があり、議会があり、制度の中で対立を解く道がある。それでも、財政の行き詰まりが政治を動かし、国家に保護を求める声が強まるという構造は、200年以上の時を超えて響き合っている。本書が「反復性」と呼ぶものである。

日本への示唆と、経営への問い

フランスの危機は、日本にとって他人事ではない。日本の政府債務はGDP比でフランスを大きく上回る。自国通貨で借りているという点ではフランスと立場が異なるが、金利が上がる局面に入ったいま、利払い費が財政に与える重みは確実に増していく。

新宿の超高層ビル
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トクヴィルの問いは、日本にもそのまま投げかけられる。私たちは国家に何を求めているのか。暮らしを守る仕組みを、人々が自ら考え、動くための土台にできているか。そして、金利が上がり、財政の選択肢が狭まったとき、何を守り、何を変え、その負担をどう分かち合うのか。

この問いは、企業経営にも通じる。手厚い福利厚生や安定した雇用は、社員を守る大切な仕組みである。だが、それが社員を「いつまでも子どものまま」にとどめる仕組みになっていないか。守ることと、自ら考え動く力を育てることを、両立できているか。トクヴィルが描いた「やさしい後見人」は、国家だけでなく、組織の中にも現れうる。

改革を始めるときにも、トクヴィルの洞察は役に立つ。変革を掲げれば、社員の期待は高まる。その期待に、日々の仕事の実感が追いつかないとき、不満はかえって強まる。そう知っていれば、改革の旗を掲げることと同じ熱量で、早い段階で目に見える成果を届けることに力を注げる。オデュッセウスが航海の前に縄を用意したように、経営者もまた、自らを律する仕組みを先に整えておくことができる。