※本稿は、鹿子木健『なぜ金融の勝者はいつも同じ顔ぶれなのか 教養としての金融市場』(講談社+α新書)の一部を再編集したものです。
投資において「焦り」は失敗のもと
投資がうまくいかない人の多くは、決して怠けていません。むしろ逆です。よく勉強し、努力し、情報を集め、ニュースを追い、分析もしています。それでも結果が出ない人があとを絶たない。
問題は、能力や知識の不足ではありません。多くの場合、結果を急ぎすぎているのです。
人は無意識のうちに、勝てば「判断が正しかった」、早く勝てれば、「より優れた判断だった」と考えてしまう。すると、心のどこかで期限を切り始めます。来月にはプラスに戻したい、次の相場で取り返し今年中に結果を出したい。その焦りが、いつの間にか判断の土台をすり替える。
しかし、その発想自体が、すでに市場の時間軸と噛み合っていません。市場は、誰かの都合や目標期限に合わせて動く場所ではないからです。
誰よりも長く市場に残った投資の神様
この当たり前の事実を、徹底して認識していた投資家がいます。ウォーレン・バフェットです。彼は「今年の成果」や「次の四半期」を基準に投資を判断しませんでした。見るのは、10年後その事業が存在しているかどうか。それだけです。
市場に早く答えを求めない。判断を急がない。理解できないものには近づかない。そうして彼は、結果として誰よりも長く市場に残り続けました。
結果を急いだ瞬間、人は未来を読むのではなく、自分の感情を満たすために取引を始めてしまう。その偏りが、気づかぬうちに判断を狂わせ、結果を確実に歪めていきます。
市場は、人間の都合で動きません。締切りも、評価期間も、進捗確認もありません。市場にあるのは、ただ価格の変動と、それを取り巻く力学だけです。
にもかかわらず、人は自分の人生の時間、生活の時間、感情の時間を、そのまま市場に持ち込みます。この不一致が、致命的な判断を生む。短期で成果を求めれば求めるほど、判断回数は増えます。判断回数が増えれば、修正も増えます。修正が増えれば、感情の介入も増えます。
最初は論理で考えていたはずなのに、気づけば思考は別の方向へ引き寄せられていきます。このまま下がったら困る。いま利益を確定しておかないと落ち着かない。先ほどの判断は誤りだったのではないか。こうして人は、相場そのものではなく、自分の感情に反応する投資へと移行していきます。

