身体と脳に負担をかけている日常の行動は何か。東京都健康長寿医療センター研究所部門長の青栁幸利さんは「現代人の働き方は、筋肉を使わず、血流が滞り、酸素や栄養が全身に行き渡りにくい。この働き方が続くと、WHOが発表したように、将来的に死亡要因のトップになりかねない」という――。

※本稿は、青栁幸利『歩く人がすべて手に入れる 医学的に正しい最強の歩き方』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

日本人が平日に座っているのは1日平均約7時間

私たち現代人の働き方は、この数十年で大きく変わりました。これはもう、誰もが気づいていることでしょう。身体を動かす仕事は減少傾向にあり、頭と指先を使う仕事が確実に増え、働く場所もオフィスから自宅へと広がっているのが現状です。

この変化で私たちの仕事の効率は上がり、移動時間が減ったことで時間の自由度も高まるなど、多くの利点をもたらしました。

パソコンを使うビジネスマン
写真=iStock.com/baona
※写真はイメージです

その一方で、私たちの身体には見過ごされがちな共通点が生まれています。それが、「長時間、座り続ける」という状態です。日本人の成人は、世界的に見ても座位時間が長いとお伝えしました。複数の国際調査では、日本人が平日に座っている時間は1日平均約7時間。

世界平均のおよそ5時間と比べても長い傾向にあります。つまり私たちは、起きている時間のかなりの割合を、椅子の上で過ごしているのです。

長時間座ることの影響は、筋肉を使わなくなることだけではありません。

特に、大きく関わるのが血流です。人の身体は、下半身の筋肉、特にふくらはぎが血液を心臓に戻すポンプの役割を担っています。歩いたり立ったりすることで筋肉が動き、血流が促される仕組みです。

ところが、座りっぱなしの状態が続くと、このポンプはほとんど働きません。血流が滞れば、酸素や栄養が全身に行き渡りにくくなります。

これは筋肉や内臓だけでなく、脳にとっても同じです。脳は大量の酸素とエネルギーを必要とする器官であり、血流の悪化は集中力や判断力の低下につながりやすくなります。

「夕方になると頭が回らない」「座っているだけなのに疲れる」「仕事量は変わらないのに、効率が落ちた気がする」などの感覚は、能力や気合の問題ではありません。

長時間、同じ姿勢で座り続けるという働き方そのものが、身体と脳に負担をかけている可能性が高いのです。