脳の病気は「血管の異常」から

また、座っている時間の長さは脳の病気にもつながります。脳の病気というと、多くの人は「突然起こるもの」という印象を持っているかもしれません。たとえば、脳卒中という病気は、ある日突然倒れて身体が動かなくなる、という印象でしょうか。

また認知症は、昨日まで普通に生活していた人が急に物忘れを始めるなど、そんなイメージかもしれませんね。ですが実際には、脳の病気の多くは、年単位、あるいは数十年単位以上前から静かに進行しています。

そして、その背景には「血管の老化」が深く関係しています。

脳卒中とは、脳の血管が詰まる、あるいは破れることで起こる病気です。脳梗塞は血管が詰まり、脳出血は血管が破れる。どちらにも共通している原因は、「血管の異常」です。

では、なぜ血管は弱っていくのでしょうか。その大きな原因の1つが、「動脈硬化」です。動脈硬化とは、血管が硬くなって弾力性を失った状態。血管の内側に傷がつき、そこに脂質や老廃物が蓄積することで血流が悪化します。

高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満などは、すべて動脈硬化を進める要因として知られています。

一番知っておいてほしい重要なことは、身体を動かさない生活もまた、血管を弱らせる原因だということです。人間の血流は、筋肉を動かすことで促進されます。歩くことで脚の筋肉が働き、血液を押し上げ、全身循環(体循環と肺循環のうち、主に前者)が活発になります。

しかし長時間座ったままの生活が続くと、この循環機能が低下して血流は滞ります。

座りっぱなしで脳卒中リスク4.2倍

実際、近年では「座りっぱなし」が脳の病気につながる危険性も強く指摘されています。カナダの大規模研究では、1日8時間以上座って過ごし、かつ身体活動量が少ない人は、脳卒中のリスクが大きく高まることが報告されました。

特に60歳未満では、長時間座位が続く人は脳卒中リスクが4.2倍、さらに運動不足が重なると7倍にまで上昇していたのです。問題なのは、運動をしていないことだけではなく、長時間動かないことそのものが、脳や血管に大きな負担をかけているということです。

足裏をマッサージする女性
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脳は、大量のエネルギー(酸素と栄養)を消費する臓器で、全身の血液の約15〜20%を必要とすると言われています。ですから、血管の機能が低下すると、最初に影響を受けやすいのも脳でしょう。

さらに最近では、「認知症」と「血管」の関係も注目され始めました。認知症というと、脳の老化だけが原因と思われがちですが、実際には血流障害や生活習慣病との関係も深いことがわかってきています。

たとえば「久山町研究」と呼ばれる長期疫学研究では、高血圧や糖尿病などの生活習慣病が、認知症(アルツハイマー病や血管性認知症)のリスクを高めることが報告されています。脳の血管が傷つくことで、脳細胞への酸素供給や栄養供給が低下し、脳の環境そのものが悪化していくからでしょう。