「座ること」が前提になった仕事の構造

海外と比較すると、日本の働き方の特徴がさらに浮き彫りになります。日本人は特別に運動嫌いなわけではありませんが、長時間労働や会議中心の業務、パソコン作業を前提とした仕事の進め方など、仕事の設計そのものが「座ること」を前提に組み立てられています。

さらに、国内でも職種による差は非常に大きいと言えるでしょう。企画、マーケティング、ITエンジニア、経理、デザイナーなどの職種では、就業時間の大半を座って過ごす人が少なくありません。

一方、営業職や販売、介護、運送、現場作業など、外に出ることが前提の仕事では、意識しなくても自然と歩数は増えます。

重要なのは、「デスクワークが悪い」「外の仕事が良い」と単純に分けることではありません。問題は、身体を動かす量の差が、本人の努力ではなく、仕事の構造によって決まってしまう点です。

デスクワークや在宅ワークの多い職種に就いている人ほど、意識して身体を動かす仕組みを作らなければ、1日の大半を座ったまま過ごす生活を送りやすくなります。

また、姿勢の問題も見逃せません。長時間の前かがみ姿勢や猫背は、首や肩、腰に負担をかけます。胸郭が圧迫されることで呼吸は浅くなり、自律神経のバランスにも影響します。歩かない、座り続ける、呼吸が浅くなる。

これらが重なることで、身体は徐々に「動かない状態」に適応していきます。

パソコンのキーボードを打つ男性
写真=iStock.com/SamuelBrownNG
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身体と脳に望ましくない状態が積み重なる

さらに問題を見えにくくしているのは、こうした変化がすぐに病気として現れないことでしょう。肩こり、腰の違和感、疲労感、集中力の低下など、どれも「よくあること」として処理されがちです。

しかし、今の働き方をそのまま続けていると、身体と脳にとって望ましくない状態が積み重なっていくのです。

長時間座り続けることで血流が悪化したり筋肉の代謝が低下したりしてしまうと、まずは肥満や生活習慣病になることが考えられます。それだけではなく、さまざまな病気を引き起こすことも。

たとえば、心筋梗塞、脳血管疾患、肥満、糖尿病、がん、認知症など、健康に害を及ぼす危険性や可能性があることは、さまざまな医療機関から提唱されています。

さらに、1日に座っている時間が4時間未満の成人と11時間以上座っている成人を比べると、後者は死亡リスクが40%も高まるとも言われています。2011年にはWHO(世界保健機関)から、「座る時間が延びることが、世界で年間200万人の死因になる」という発表もありました。

以前は、喫煙が世界で500万人以上、飲酒が300万人以上の死因と言われていましたが、「座りすぎ」が死亡原因のトップに躍り出る未来は、そう遠くないのかもしれません。