ホンダは2026年3月期、EV関連で1兆5778億円の損失を計上し、上場以来初の最終赤字に転落した。ところが同じ年、米ケリー・ブルー・ブックのブランド調査では7部門で首位を獲得。これまで「壊れない」「燃費がいい」といった実用性で評価されてきたホンダが、デザイン部門でも初めて1位となった。苦境のなかで、ホンダ車に何が起きているのか――。
ホンダ 2026年3月期決算説明会・ビジネスアップデート
写真=日刊工業新聞/共同通信イメージズ
ホンダ、2026年3月期決算説明会・ビジネスアップデート。写真は三部敏宏社長。=2026年5月14日

ポルシェと見間違えられたホンダ車

カリフォルニア州サンディエゴ。2026年1月、ホンダが開いた試乗会では、真新しいクーペのプレリュードをポルシェと見間違える人まで現れた。

車体後部に配された流れるような筆記体のロゴが、ポルシェ911をどこか思わせるのだと、カナダの自動車ニュースサイト「カー・バズ」はいう。もちろん、ロゴだけではブランドの印象は覆るはずがない。デザインも秀逸だ。

試乗会には、カー・バズの編集委員、ジャレッド・ローゼンホルツ氏も招かれていた。ローゼンホルツ氏は、25年ぶりに復活したこのクーペについて、曲線をまとった車体は「どの角度から見ても優美で、高級品のように見える」と評している。

ホンダのアメリカでの評価は長らく、その実用性と信頼性に集中してきた。壊れない、無駄がない、よく走る。デザインが話題の中心になることは少なかった。

ここにきて同社は、従来の実用性や信頼性に加え、デザイン面でも評価を高めている。新車購入検討者への調査に基づく米自動車価格情報サイトのケリー・ブルー・ブック(KBB)の賞では、ホンダが7部門を制した。中でもデザイン部門での受賞は初めてだった。

今年に入り、苦境も伝えられたホンダ。電気自動車(EV)戦略の誤算とアメリカの関税が重なり、2026年3月期には4239億円の最終赤字を計上した。ロイター通信によれば、上場以来初めての赤字だ。

だが、2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月期)の営業利益は、第1四半期として過去最高を更新した。

生産目前で消えた「Honda 0」

米ホンダによると、2025年のアメリカでの販売台数は、高級ブランドのアキュラと合わせて143万577台。2021年以来の高水準となった。

ホンダブランドではSUVやピックアップを含むライトトラックが初めて年90万台を超え、ハイブリッド車を中心とする電動車も初の40万台超で、販売の3分の1近くを占めた。25年ぶりに復活したプレリュードが全米の販売店へ順次届けられていたのも、その年の12月のことだ。

これまでアメリカでホンダを支えてきたのは、実用性や燃費の良さを強みとする車種だった。一方で、ホンダは次世代の成長分野としてEV開発にも巨額の資金を投じてきた。そして2026年3月、北米で生産予定だったEV3車種の開発と発売の中止を発表するに至る。

中止されたのは、新型EVシリーズ「Honda 0(ゼロ)」のSUVとセダン、そしてアキュラの「RSX」だ。英自動車誌オートカーによれば、Honda 0の2車種は生産開始まであと数カ月という段階だった。

発売が中止になったHonda 0のSUV「サルーン」
発売が中止になったHonda 0のSUV「サルーン」(写真=TTTNIS/CC-Zero/Wikimedia Commons)

ホンダの決算説明会資料によると、北米で生産予定だったEVの開発中止などに伴うEV関連損失は、2026年3月期で1兆5778億円にのぼった。このうち営業損益に計上された分だけでも1兆4536億円と、2025年3月期の営業利益1兆2134億円を上回る。アメリカ事業がどれだけ好調でも、埋めきれない額だった。

米自動車愛好家向けメディアのオートピアンは、1957年の上場から69年間、ホンダが通期で赤字を計上したことがなかったと指摘する。1990年代のバブル崩壊後の不況も、リーマン・ショックも、黒字を維持して乗り切ってきたのだ。