「全車EV」目標を襲った逆風

開発中止となった3車種の発端は、2021年にさかのぼる。ホンダはこの年、2040年までに世界で販売する新車をすべてEVとFCV(燃料電池車)にする目標を掲げた。オートカーによれば、2024年にはその象徴としてHonda 0シリーズのセダンをコンセプトとして初公開し、翌年にはSUVも披露した。あと一歩で発売というところまで来ていた。

ところが、事業環境が変わった。ホンダは今年3月12日に公表した資料で、その変化をこう説明している。

アメリカでは化石燃料規制の緩和やEV補助金の見直しが進み、EV市場の成長が鈍った。関税政策の変更で、ガソリン車とハイブリッド車の事業も打撃を受けた。EV開発に経営資源を振り向けた分、アジアでは商品競争力が落ち、ソフトウェアを武器に短期間で車を開発する新興EVメーカーに押されたという。

この発表でホンダは、2026年3月期の最終損益の見通しを、3000億円の黒字から4200億〜6900億円の赤字に下方修正した。社長と副社長は、2027年3月期の月額報酬の30%を3カ月分返上するという。

オートピアンの評価は手厳しい。需要の乏しいEVを作ったことより米政府の政策に不振の原因を求めるのは、責任転嫁に見えると指摘する。EVに投じた資金をハイブリッド車に回していれば、業績の落ち込みを抑えられたはずだという。

デザインで初の1位

こうした逆風の中で迎えた、4月8日。KBBが米アトランタで、消費者選択賞の受賞ブランドを発表した。苦境が伝えられるなか、ホンダのブランド力を示す結果となった。

この賞でホンダは、大衆ブランド向けの6部門をすべて制覇。さらに、EV・ハイブリッド部門も加えた計7部門で首位に立った。

KBBを傘下に持つコックス・オートモーティブで市場調査を担当するシニアマネジャーのバネッサ・トン氏は、「今年のホンダは別格の存在だ」と評価する。高級ブランド向けの3部門で1位となったレクサス(トヨタ)と合わせ、日本メーカーの技術と品質が業界を牽引しているとの指摘だ。

消費者選択賞は、購入検討者による印象を集計したものだ。1年以内に新車を買う予定の1万2000人超に14項目を尋ねる「ブランド・ウォッチ」調査に基づく。KBBは、こうした印象が購入の判断や、その後も同じブランドを選び続けるかどうかを左右すると説明する。注意点として、人々がブランドをどう見ているかを数値化した指標であり、性能の実測値とは別物であるが、それでも米消費者の心象の良さを物語る結果だ。

ホンダの総合ブランド賞の受賞は5年連続10回目、ベスト・バリューは2015年から12年連続となった。実用性で評価されてきた同社が、今年はデザイン部門でも初めて1位を獲得したことにも、KBBは言及している。

理由として、日本未発売の3列シート大型SUVであるパイロットと、5人乗りSUVのパスポートの、「無骨な良い見た目」をKBBは挙げる。いずれも日本のCR-Vよりもひと回り大きいサイズ感だ。このほか、セダンのアコードとシビック、そして「流麗な」新型プレリュードも受賞に寄与したとKBBは説明している。

ホンダ・プレリュード(6代目)
ホンダ・プレリュード(6代目)(写真=M 93/CC-BY-SA-3.0-DE/Wikimedia Commons)