300兆円が集まっている「投資」

また、アメリカの金利上昇によってIT株を中心に株価が下落、仮想通貨も下落し、多くのヘッジファンドが打撃を受けました。そこにヘッジ外債による日本の銀行の損失拡大も重なって、オルタナティブ投資にさらに資金が集まるようになりました。

そうしたマネーの向かった先のひとつが、プライベートクレジット市場なのです。

2026年に入り、その総額は全世界で300兆円にも及び、機関投資家だけでなく個人の投資家の投資額も膨れ上がっています。

5年、10年、20年など満期までの年限が定められている債券取引は、生命保険会社など長期にわたって安定したリターンを求める投資家中心に必ず需要があります。

サブプライム危機やリーマンショックの例を挙げるまでもなく、株価は上がるときもあれば、下がるときもあります。自分の選んだ銘柄(会社)の業績がよく、株価が上昇を続ければいいですが、市場環境の大きな変化や、その企業の不祥事、思わぬ事故など、株式には多くのリスクが潜んでいることを、資産家たちはよく知っています。

それに対して「毎年おおむね10%の利回りが得られます」というプライベートクレジットが、投資家に魅力的に見えるのは理解できます。仮に1億円を10%の利回りで10年間運用できれば2億円に膨れ上がる計算になります。

フィリピンの証券市場
フィリピンの証券市場(画像=Katrina.Tuliao/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons)

有名企業がやっているから安全なのか

目先の株価が上昇していても、株はやはり水物です。

ある企業の株が10年で2倍になることももちろんあるでしょうが、損失が出る可能性もそれなりにあります。プライベートクレジットは、「ほぼ確実に」毎年10%の利回りがあるとアピールして、保険会社や年金基金だけでなく一般の投資家にも急激に広がりました。

しかし、そんなうまい話が本当にあるのでしょうか。

10%の利回りと言いますが、いったい誰がその「10%」分を負担しているのでしょう。

日本の富裕層向けにプライベートクレジット投資信託を売っている証券会社の営業担当は、「ブラックストーンや、アレス・キャピタルといったアメリカを代表する会社がしっかり精査したうえで組成し、販売している商品ですから、破綻の可能性はきわめて小さく、心配ありません」と説明しているそうです。

たしかに、ブラックストーンやアレスは日本のメガバンクをはるかに凌ぐ規模を誇り、非常に優秀な社員を集めて破綻のリスクを管理し、巨額の資金を運用しているのは間違いありません。それならば、絶対に投資して安心なのか――私はやはり、そうとは言い切れないのです。