生活用品大手のアイリスオーヤマが販売するサーキュレーターは、国内外のシリーズ累計販売台数が3000万台を超える主力商品になった。家電事業では後発だった。しかも、2010年の発売当初は、店頭で「小さな扇風機」と受け取られ、手応えを得るまで約3年かかった。商品の入れ替わりが激しい家電業界で、なぜ見切らずに改良を続けられたのか。フリージャーナリストの前屋毅さんが、商品開発本部の本部長で執行役員の原英克氏に、販売を続けた判断とヒットまでの経緯を聞いた――。(後編)
発売当初は「小さな扇風機」にしか見られなかった
サーキュレーターといえば現在、アイリスオーヤマの家電製品の代表格ともいえる存在である。国内外におけるシリーズ累計販売台数は、2026年1月時点で3000万台を超えている。
風をあてて人が涼むための扇風機ではなく、部屋の空気を循環させて室温ムラをなくすために開発されたのが、サーキュレーターである。日本発ではなく、アメリカ発の商品で、これが日本にも輸入されたり、日本の中堅メーカーが手がけたりしていた。
アイリスオーヤマも、2010年に最初のサーキュレーターを発売されている。だが当初は、あまり売れなかった。
当時の商品は、現在の「サーキュレーターアイ」のようなボール型ではなく、前面部が平面的なデザインだった。風は強いものの運転音が大きい、という欠点を抱えていた。
不振の原因は、「サーキュレーター」という家電そのものが日本ではほとんど知られていなかった点にもある。アイリスオーヤマは発売当時から「室内の空気を循環させ、冷暖房効率を高める家電」として売り出していた。だが、商品開発本部長で執行役員の原英克氏によると、店頭でも「単なる小型の扇風機」と受け取られ、商品の存在意義が客に伝わらなかったという。
発売当初は振るわなかった家電がなぜ、シリーズ3000万台を超える「主力商品」になったのだろうか。その転機は、商品の機能を変えるより先に、「何に使う家電なのか」を伝え直したことだった。


