それでも世界的なデザイン賞を続々受賞
デザインを最優先しない。にもかかわらず、アイリスオーヤマの商品は数多くのデザイン賞を受賞している。同社のグッドデザイン賞の受賞数は、2026年1月時点で116件に上っていた。
2026年5月には、家電4商品が、1955年にドイツで創設された世界三大デザイン賞のひとつといわれる「Red Dot Design Award(レッド・ドット・デザイン賞)」を受賞している。そのひとつ、サーキュレーターの「WOOZOO 360 barrel」は、「2025年グッドデザイン賞」と「iFデザインアワード2026」とあわせてトリプル受賞している。
なぜ、デザインを最優先しない会社の商品が、これほど評価されるのか。原氏はこう説明する。
「デザイン賞がアート的なものを評価するのではなく、『どんな課題を解決するための商品のデザインか』といったコンセプト重視の評価になってきている気がします」
アイリスオーヤマが賞を追いかけているのではなく、賞がアイリスオーヤマの価値観に近づいてきたと、いえなくもない。「私たちが賞を意識して開発することはありません」と、原氏は念押しした。
「引き算の開発」に生まれた例外
その「引き算の開発」にも、例外はある。じつは、前出のデザインのトリプル受賞をはたしたサーキュレーターの「WOOZOO 360 barrel」も、そのひとつである。
「サーキュレーターの売上が、だんだん天井に近づいてきていると感じていました。部屋の空気を攪拌するサーキュレーターを、私たちとしては冬にこそ使って欲しいと考えています。でも実際は、冬の売上は低くて、夏のほうが高くなっています。扇風機のイメージをもっていらっしゃるユーザーが、まだ多いからだと思います。それなら、夏の使用を否定するのではなく、冬もふくめて年中、使ってもらえるようにしたいと考えたのです。年中、部屋に置いてもらうためには、やはりデザインにこだわったほうがいいだろうという結論でした」
原氏は、そう言った。
こうして「WOOZOO 360 barrel」は、従来のボール型とは異なる円柱形に、ファブリック調の素材を組み合わせた。もちろん、そのために“機能”を引き算することはしていない。左右に360°、上下に90°の首振り機能を備え、衣類の乾燥時間は自然乾燥に比べて約62%短縮できるという。
「デザインに少しおカネをかけたぶんだけ、普通のサーキュレーターより価格が高くなっています。しかし、年中置いてもらえるようにするというコンセプトを説明して、社長も出席する新商品として開発を進めるかどうかを決める新商品開発会議でも、一発で採用されました」


