売場ポップで「エアコンの電気代2割減」を訴えた

伝え直す舞台となったのは、売場である。サーキュレーターは、風を直接浴びて涼むのではない。エアコンと一緒に使い、床や天井付近に偏った空気を循環させる。そうすれば夏だけでなく冬にも使え、冷暖房効率を高められる。

原氏によれば、アイリスオーヤマは売場の販促ポップで、「夏も冬も使えば、エアコン分の電気代を2割減らせる」と訴え続けた。「室内の空気を循環させる」という機能を、「電気代が下がる」という生活上のメリットに置き換えて示したのである。

ただ、伝え方を変えても、すぐにヒットしたわけではない。原氏が手応えを感じるまでには、約3年かかったという。

なぜ3年も「我慢」できたのか

手応えが乏しい時期が続いても、アイリスオーヤマはサーキュレーターから撤退しなかった。

「売れゆきが右肩下がりを続けていれば店頭から消えていたかもしれません。しかし、多少なりとも右肩上がりでしたから、生き残れたのだと思います」

原氏が判断材料にしていたのは、売上高の絶対額ではなく、その「傾き」だった。いまの売上が小さくても、前年よりわずかに伸びていた。その伸びが、販売を続ける支えになった。

アイリスオーヤマは売場で商品の用途を伝えながら、改良も続けた。そして2018年、商品の形そのものを大きく変える。

「売り方」だけでなく「形」も変えた

売場で用途を伝える一方、開発陣は商品の改良も続けた。

サーキュレーターに求められるのは、人の体に広く風を当てることではない。離れた場所まで風を真っすぐ送り、部屋の空気を動かすことである。

「扇風機と同じで、羽根は右回転しています。そうすると、風は右に広がっていきます。これを前面のグリルで逆方向に矯正しているのです」

羽根から送り出された風は、回転しながら外側へ広がろうとする。それを前面のグリル(前カバー)で中心方向へ整え、直進性を高めている。ただし、風を強く矯正しすぎれば勢いが弱まり、遠くまで届かなくなる。

本体を大きくせず、強い風を遠くまで送るにはどうすればよいのか。開発担当者がたどり着いた答えが、前面パネルそのものを球面にすることだった。

「サーキュレーターアイ」
画像提供=アイリスオーヤマ
2018年に発売した初代「サーキュレーターアイ」。前面のグリルが球面になっている