繰り返される「欲望の連鎖」
本書で述べるように、プライベートクレジットの成り立ちやその商品性には、現在の金融界の歪みが集約されているように私の目には見えます。長年クレジットの世界に身を置いてきた人間として、自戒を込めて、金融界の醜い一面を見るような気持ちにまでさせられます。
儲けたい、もっともっと儲けたい――端的に言えば、そのような欲望の連鎖が、プライベートクレジットをここまで巨大化させてしまったように感じるのです。
プライベートクレジットは、当初の成り立ちからはかなり変化し、歪んだ形で膨張を続けているように映ります。本書で詳しく説明するように、1970年代にアメリカで始まった「ジャンク・ボンド」取引を起源とし、貸し付け組合など地方の金融機関が取引していた金融商品が、様々な形で市場化され、大手銀行の資金が入るようになっただけでなく、個人にも売られるようになりました。
最近では日本の大手証券会社の営業マンが顧客に「プライベートクレジット投資信託を買いませんか」と営業をかけているという話をよく耳にします。なかには、「1億円以上の金融資産を持つ方に限ってご案内しています」というようなセールストークでプライベートクレジット投信の営業をしている証券会社もあるようです。それによって、市場が大きく動いたときの影響の拡大が心配されているのです。
「ゴキブリを1匹見つけたら他にもいる」
2026年4月には、アメリカ金融大手のJ.P.モルガンのトップ、ジェイミー・ダイモンCEOがプライベートクレジットについて、
「いずれ必ず訪れるであろう信用サイクルで損失は予想以上に大きくなる」
と発言し、注目されました。
ダイモンCEOは以前からプライベートクレジットに否定的で、2025年秋には「ゴキブリを1匹見つけたら他にもいる」と発言したこともあります。
ダイモン氏が言及したように、その危機感は金融界全体で共有されつつあります。
本書中で詳述していますが、プライベートクレジットは、本来プロの機関投資家向けのニッチな金融商品だったものがコロナ禍以降の猛烈な資金流入によって膨れ上がってしまっていることに加え、クレジット投資自体に潜む危険という二重の危うさがあると私は考えています。
クレジット債権は相対で融資が行われ、上場されていないため、「時価」がはっきりしません。そのため、クレジット投資を手がけるファンドマネジャーは、高利回りの融資を行うことによってファンドマネジャーとして高いパフォーマンスを「一時的につくる」ことが可能なのです。
もちろん、債務不履行(デフォルト)になることが分かっていて融資するということがあっていいはずがないですが、もしやろうとすれば、それができてしまう余地があるということです。そういう麻薬のような一面があるのです。

