異星人が来るまで協力できないのか?
ただし、現実に戦っている国同士が、本当に向き合い、分かり合うことは容易ではない。ここからはこの作品の筋書きを離れた仮定だが、別の惑星から異星人が攻めてきて、人類全体が同じ危機にさらされるような事態にでもならなければ、互いを協力すべき相手として見られないのかもしれない。それほどまでに、敵と味方を分ける意識は強い。しかし、共通の脅威が外から現れるまで、私たちは協力できないのだろうか。すでに失われている命と、さらに広がり得る破壊を、双方が防ぐべき共通の危機として捉え直せないか。この問いも、私が現実の戦争に向けて投げかけたかったものである。
外交で「停戦」に同意しても、その一語だけで実行条件が共有されたことにはならない。何を止め、いつから止め、どの行為を違反とするのか。例えば、こうした条件が曖昧なら、双方が約束を守っているつもりで相手を非難することさえ起こり得る。言葉の一致を、行動の一致へ変える作業が必要なのだ。
相手を知るという『孫子』の問いも、ここで意味を持つ。自分にとって当然の判断基準が、相手にも当然だと思い込んではならない。違いを把握し、その違いがあっても機能する約束をつくる。相手への理解を深める努力と、協力の条件を明確にする努力は、並行して進められる。
企業の提携でも、「品質重視」「迅速に対応する」といった言葉に同意しただけでは足りない。求める水準や期限、責任を明確にし、結果を確認する必要がある。同じように、停戦も、宣言を交わした後に約束が実行される仕組みがあって初めて、人々の命を守る力になる。私は、目の前の戦況を分析するとともに、当事者がどう向き合い、戦闘を止め、協働へ進むべきかという、あるべき姿を提示したいと考えた。その使命感から、『孫子』とこのSF作品を重ねて、この記事を執筆したのである。
5本の実践を未来を見通す方法へ
5本の記事を通じて問い続けたのは、人間や社会を動かす条件である。過激な権力を支持する仕組み、判断を修正できる組織、生活を支える基盤、苦難から立ち直る過程、違いを超えて協力する約束。これらを捉えると、ニュースの見え方が変わる。目の前の出来事がなぜ起きたのかに加え、どの条件が続けば問題が深まり、どこを変えれば別の未来へ進めるかを考えられる。
新著では、この読み方を「構造」という言葉で整理した。動因、始まり、成長、転換点、頂点、崩れ、終わり、反復性という八つの要素を手がかりに、変化の過程を読む。目の前のニュースを知るだけでなく、自分たちがいま、どの局面にいるのかを考えられるようにしたい。
ただし、古典と現代が似ているからといって、同じ結末が待つと決めつけることはできない。時代ごとの制度や技術の違いを確かめ、どの条件が共通し、どこが異なるかを考える必要がある。構造を知る価値は、避けられる過ちに気づき、自分の判断を変えられるところにある。

