大手を支える春巻きの「黒子企業」
茶色・黄色・オレンジ・緑・黒・ピンク・赤――。テーブルの上に載せられた見たことのない春巻きを前に、心が躍った。それぞれ違う具材が入っているようだが、オーソドックスな茶色以外は中身の見当がつかない。
「黒いものは、ブラックフライデーのときに大手コンビニで発売された、すき焼き風春巻き。黄色のものは別のコンビニで販売された、ベーコンポテト春巻きです」
促されるまま手づかみでいただくと、「パリパリッ」と心地良い音が響く。調理してから2時間半が経っていたが、まるで揚げたての食感だった。
この日筆者が訪れたのは、神奈川県藤沢市に本社を置く春巻き専業メーカー、スワロー食品だ。ほとんどの消費者はこの名前を知らないだろう。けれど、業務用の冷凍春巻き市場では、大手NB(ナショナルブランド)メーカーと肩を並べるほどの急成長を遂げている。同社が1日に製造する春巻きは、最大約70万本。年間換算だと2億本を超える。
最盛期は業界全体で30〜40社がひしめき合っていたが、1990年代後半以降は、総合食品メーカーが次々と撤退。今残っているのは5〜6社程度だ。そのなかでも同社が頭角を現し始めているのは、大手コンビニ3社のほか、オーケー・ヤオコー・サミットなどの有力スーパーを顧客に抱えているからだ。大手コンビニのうちの1社にいたっては、15年にわたり取引が続いている。
ただ、委託を受けて他社ブランド品を製造するOEMメーカーのため、一般の消費者が社名を目にする機会はない、というわけである。
なぜコンビニ、スーパーが手放せないのか
さて、スワロー食品が名だたる企業とタッグを組めているのは、高品質の製品として定評があるからだ。
例を挙げると、大手スーパーの惣菜コーナーでは、定番人気とされる餃子やシュウマイを抑え、春巻きが売り上げナンバーワンに。「安さ」を売りとしている別のスーパーでは、単価の安い別メーカーから同社の春巻きに切り替えた。すると、評判が広がってリピーターが増加。今では、切り替え前に比べて売り上げが10倍に伸びているという。
誰もが一度は口にしたことがある、「あの味」を作っている黒子企業――それが、このスワロー食品なのである。
しかし、同社は社員数が100人未満の中小企業で、外から見る限り、工場に最新鋭の設備が入っているようには思えない。なぜ、そうそうたる有名企業に支持されているのだろうか。
鍵を握っていたのは創業者……ではなく、畑違いの2代目社長だった。


