護摩修行に参列すれば御本尊を拝見できる

千日太夫の秘法の多くはこんにち失われてしまったようですが、飯縄大権現を本尊とする高尾山薬王院では、いまも日々祈りの声が山内に響き渡っています。

そのご本尊のお姿は通常の参拝では拝見できませんが、1日6回行われる護摩修行に参列すれば、ご祈祷のあとで飯縄大権現の立像を近しく拝することができます。今回の取材で筆者も同席させていただきましたが、ある意味でこれは貴重な“体験”でした。

――修験のお寺らしく、僧侶が法螺貝を鳴らしながら入堂。経文と真言の唱和が堂内の空気を震わすなか、参列者の祈りが込められた護摩木が投入され、焔とともに祈りがピークを迎える。そして、その余韻に浸る間もなく、導師に促されて護摩壇奥におわすご本尊の許へ。目の当たりにしたそのお像の、思いがけない大きさと異相極まりない容貌に思わず息を呑む――。

5つの神格が合体したお姿

お寺いわく、五相合体の相。高尾山薬王院が伝える飯縄大権現は、なんと不動明王、カルラ天、ダキニ天、大聖歓喜天(聖天)、弁財天(宇賀神)という5つの神格が合体したものだそうです。どういうことか。薬王院の法務部長・上村公昭さんの解説に耳を傾けましょう。

高尾山薬王院の飯縄大権現を構成する五相(5つの尊像)。中央の大聖不動(不動明王)をはさみ、大聖歓喜天(聖天)、吒枳尼天(ダキニ天)、迦楼羅王(カルラ天)、大辯財天(弁才天)の図(国立国会図書館デジタルコレクション 『仏像図彙』より)。

「『五相』のベースになっているのは、不動明王。左手の縄で、助けを求める人をしっかり捕まえて縁をつなぎ、右手の剣で悪い縁を断ち切って、背中の炎で悪いものを焼き尽くす。カルラ天は、背中の翼とくちばしが特徴で、私たちが困ってるときにその翼でいつでも飛んで助けに来てくださる。ダキニ天は尊体が乗る狐の部分。日本ではお稲荷さんと同一視されているように、五穀豊穣や商売繁盛といったご利益を象徴しています。

また弁天様は、おもに芸能・学問の才能(弁才)と、福財をもたらすご利益(弁財)」を授けてくれます。残る聖天様(大聖歓喜天)は、ヒンドゥー教でいうガネーシャで、どんな人の願いも必ず叶えるという強い誓い(誓願)をした神様。ということは、それと合体した飯縄大権現も、同じ心、同じ誓いをもっておられる。だから飯縄大権現様も祈願する人の願いを叶える存在として信仰されたわけです」