BMWグループの世界販売は、約185万台(2012年)と中堅の自動車メーカーだ。だが、高級車市場では世界トップのシェアを誇り、収益率も年8~10%以上をキープしている。13年、新たに持続可能な次世代モビリティ「BMW i」を投入し、環境対応車のラインアップ強化を目指す。そのプロジェクトを統括するマキシミリアン・ケルナー氏に、プレミアムにこだわる同社のブランド戦略について聞いた。
――東京モーターショーのBMWブースでは、コミューターEV(電気モーター)「i3(アイスリー)」とPHV(電気モーター+1.5リットル直列3気筒ツインパワー・ターボ・エンジン)のスポーツカー「i8(アイエイト)」の新型モデルが次世代のプレミアム・モビリティとして話題を集めたが、新ブランドを投入する狙いはどこにある?
【ケルナー】今から6年前、BMWグループでは将来の社会環境を予測しながら「i」というブランド戦略を考えたときに、私たちは持続可能な次世代モビリティ、つまりトータルでの「サステナビリティ」を達成することを目指すことを決めました。もちろん、クルマのパワーユニット自体は燃費効率を高めてゼロエミッションを達成することは言うまでもありません。設計・開発・生産面などでも環境に優しいことや経済的な持続可能性、さらに、社会的責任ということも含めました。例えば、「i」を生産する場合、工場内は、静かで、音が非常に少ない。無理な姿勢で負担をかけない生産方式に変えるなど、労働環境も従業員にとって働きやすい条件を整えています。工場で使用するエネルギーも太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーをすべて自前でつくり出す供給システムを導入しました。
――日本市場でも「i3」と「i8」の予約受注を開始しました。どんなユーザーがターゲットになりますか?
【ケルナー】それはみなさんで想像してみてください(笑)。我々は、特定のユーザー層に特化したクルマだとは考えていませんし、どなたにも乗っていただきたいのです。私たちはこれまで高い地位を占める「ブランドポジション」を長い年月をかけて築き上げてきました。この価値観を曲げたり、ある特定のポジションに妥協してまで、開発することはしません。この「i」ブランドのコアバリューは、
「ビジョナリーモビリティ」と「インスピレーショナルデザイン」「サステナビリティ」の3つです。つまり未来志向型の移動手段であり、クルマが持つ本質的な価値が一目でわかるデザイン。そして環境問題などでも罪悪感を持たないで乗れることです。この種のモビリティを好まれる顧客は外出好きで、責任感が強い方ではないかと思います。