日本人に教えたい困った外国人との上手な付き合い方
「大至急、垂大使は外交部に出頭せよ」――。本書は著者である垂氏が中国外交部から抗議のために呼びつけられた緊迫の場面から始まる。2021年12月1日、安倍晋三元首相が台湾のシンクタンク主催のシンポジウムで発した「台湾有事は日本有事」との言葉に、中国当局が激怒したのだ。
元駐中国大使。1961年、大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。85年、外務省に入省。2020年、在中華人民共和国日本国特命全権大使(第16代)就任、23年12月退官。現在は、立命館大学教授を務める。
当時の中国外交部の対応は「戦狼外交」と呼ばれる強硬姿勢で知られていた。だが垂氏は真っ向勝負。中国による抗議の場を、むしろ日本の立場を相手に知らしめる場に変えた。
「私の仕事は日本の国益を守ること。親中でも親米でもない、あくまで親日本です」
外務省に入るまでは中国語を全く勉強したことがなく、研修の中国語テストは白紙提出。著者の弁によれば省内では「端牌」、麻雀で言う価値の低い牌だったそうだが、「中華圏」にのみ赴任する異例のキャリアを積み、20年には中国大使に就任した。中国人脈の開拓、中国文化や歴史への理解に邁進しながらも日本という軸はブレない。戦う大使として外交官人生を終えた。
「日本人は『和をもって貴しとなす』という言葉が大好きです。これは『論語』に由来するものですが、『論語』には『君子は和して同ぜず』という言葉もある。これが外交の本質です。相手に合わせるばかりでは付和雷同になるだけ。国益を見失わず、自分を見失わない姿勢が外交官にも政治家にも必要です」
先の参議院選挙でも「外国人政策」が争点となった。
「『和して同ぜず』は外国人との共生においても重要なことだと思います。日本に暮らす以上、日本のルールや文化を尊重するのは当然です。ルールを守らない外国人の存在は、日本人だけでなくルールを守って暮らしている外国人にとってもいい迷惑です」
中国の友人の中には日本に反感を抱く人もいたという。
「ところが、そんな友人の一人が2012年に初めて来日して奈良を訪れた際、法隆寺で中国・唐時代の建築様式を目にすると、跪いて涙を流したというのです。彼は建築を学んだことがあったのですが、中国には残されていないものが、日本で千年以上も大切に残されてきたことを目の当たりにしたからです。日本人があまり知らないだけで、中国の富裕層や知識人は日本に対するリスペクトを持っている人がたくさんいます。ポスト中国共産党の時代には、彼らが重要な役割を果たすことでしょう。中国人をはじめ、外国人とは長期的視野で戦略的に付き合っていくべきです」
本書は、真の共生や中国の未来を考えるヒントにもなりそうだ。
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