「江戸切りそば」に込めた思い

人は生まれ育った土地の味を基準にします。だから、東京のそばは「知らない食べ物」のように感じられたのでしょう。

そこで、「これは東京のそばですよ」と伝えるために、15年ほど前、私が「江戸切りそば」という言葉を考えました。

商標登録はできませんでしたが、この言葉には「東京の味を全国で守る」という思いを込めています。

だから地域ごとにつゆを変えることはしませんでした。東京の味を守る。その「幹」だけは、一度も変えていません。

一方で、実はおつゆ自体は2回ほどマイナーチェンジをしているんです。創業当初に比べると、今は少しだけマイルドで、少しだけ甘くしています。

きっかけは、お客様の声でした。20年ほど前、「麺はいいけれど、つゆがしょっぱい」というご意見をたくさんいただいたのです。

当時のクレームの7割ほどが、「しょっぱい」という内容でした。私は東京の下町育ちですから、その味に違和感はありませんでした。

でも、「東京らしさ」と「しょっぱさ」は同じではありません。そこで、江戸の味は守りながら、ほんの少しだけ甘く、ほんの少しだけやさしい味へ調整しました。

「やっぱり、うちの方が美味しいな」

江戸そばには、「辛いつゆを少しだけつけて食べる」という文化があります。

昔ながらの味を守り続ける店もありますし、時代に合わせて変えていく店もあります。どちらが正しいという話ではありません。私たちは、「全国で愛される東京のそば」を目指して、少しずつ調整する道を選びました。

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ちなみに、これまでつゆのマイナーチェンジをお客様にアナウンスしたことはありません。「じゃあ今までは美味しくなかったのか」と思われても困ります。美味しいかどうかを決めるのは、お客様です。私たちではありません。もちろん、競合の研究もしています。

今もおそば屋さん巡りは続けています。

でも、そのたびに思うんです。

「やっぱり、うちの方が美味しいな」と(笑)。

もちろん、見るべきところは見ます。学ぶべきところは学びます。でも、それで自分たちの「幹」を変えることはありません。守るべきものは守る。変えるべきものだけを変える。その積み重ねが、「江戸切りそば」という今の味を育ててきたのです。

まとめ
幹は変えるな。改善は止めるな

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