ベストな加水率を見極める「職人技」
そば粉はロットごとに水分量が違います。製粉前のそばの実の状態が毎回違うからです。さらに、その日の気温や湿度も影響します。空調設備が整った現在でも、素材によるわずかな違いは残ります。
一番難しいのは加水率の調整です。製麺機を使っているからといって、ボタン一つで同じ麺ができるわけではありません。どれだけ水を加えるか。そこは経験がものを言います。機械はブレを減らしてくれますが、最後は人の目と経験が必要です。その技術を身につけるには、やはり時間がかかります。改めて考えると、かなり非効率です。
それでも私たちが店内製麺を続ける理由は、お客様が最初の一口を食べた瞬間の感動を大切にしたいからです。打ったその日に茹でたそばと、工場で作られて2日かけて運ばれてきたそばでは、香りも食感も違います。
その違いを数字で表すことはできません。でも、食べたお客様には伝わります。
「やっぱり、ゆで太郎は美味しい」
そう感じていただき、価格にもボリュームにも満足していただけるから、また足を運んでくださるのです。私たちが効率化を追い求め過ぎないのはそういうことです。職人に依存し過ぎないように技術を分解して、誰でもできる仕組みにしてきましたが、それは機械に頼るということではありません。
技術を仕組みにすることと、美味しさまで効率化することは別です。数字の上の効率より、お客様が食べた瞬間に感じる満足の方が大切です。その体験価値を守るためなら、あえて非効率を選ぶ。それが、ゆで太郎の自家製麺に対する考え方なのです。
まとめ
効率より、お客様の「美味しい」を優先する
「20分ダシ取り」→「5分ダシパック」に
ゆで太郎のダシの取り方は、他のそばチェーンとは少し違います。創業から10年ほどは、20分かけてダシを取っていました。これは町のそば屋で一般的な、厚削り節を長時間煮出すやり方を短縮したものです。本来は40分ほどかける工程ですから、それでもかなり時間をかけていました。
和食では、大きな鍋で花かつおから一番ダシを取り、その後、二番ダシをうどんや煮物、丼のつゆに使います。ダシは和食の土台であり、そばつゆにも欠かせません。しかし、それだけに非常に手間のかかる仕事でもあります。
私が考えたのは、「もっと短くできないか」ということでした。もし5分で同じ品質のダシが取れたら、作業は大きく変わるはずです。
そうして生まれたのが、「5分ダシパック」でした。もちろん、強火で煮れば早くダシが取れるという話ではありません。日本のダシは繊細です。雑に扱えば、香りも旨味も損なわれてしまいます。そこでヒントになったのが、市販のダシパックでした。
