品質と効率を両立した画期的仕組み
鰹節などを細かい粉末にし、パックに詰める。これを95度のお湯で5分ほど煮出すだけで、十分なダシが取れるのではないか。
試行錯誤の末、その方法を実現しました。一度に6リットルのダシが取れ、そこへ3分の1ほどのかえしを加えれば、ゆで太郎のかけつゆが完成します。
普通なら二番ダシまで取るところですが、このパックは味も香りもすべて出し切る設計なので、そのまま廃棄します。
この仕組みが画期的だったのは、品質と効率を同時に実現できたことです。従来は朝、大鍋でダシを取り、寸胴へ移して冷まし、営業前にもう一度温め直していました。その間に香りは少しずつ飛んでしまいます。ガス代もかかります。
一方、5分ダシパックなら、その時に必要な分だけ、その場で作れます。前日から仕込む必要もありません。
工場でストレートつゆを製造して各店舗へ配送するチェーン店もあります。しかし完成から提供まで時間がかかる以上、香りはどうしても落ちてしまいます。5分ダシパックは、品質を落とさず、しかも作業時間まで短縮できました。
私はそば屋の職人出身ではありません。だからこそ、「40分かけるのが当たり前」という固定観念に縛られずに済んだのでしょう。「うまい・安い・早い」を全国で再現するには、職人技を誰にでもできる形へ置き換えなければならない。
その発想が、このダシパックを生みました。もちろん、40分かけて丁寧にダシを取るそば屋を否定するつもりはありません。ただ、時間をかけることと、美味しいことは必ずしも同じではない。
品質を維持したまま工程を短縮する。職人の技術を再現可能にする。その難題を乗り越えられたことが、ゆで太郎にとって大きな転機だったのです。
まとめ
固定観念にとらわれない
北海道から九州まで同じ味を貫く
実は、ゆで太郎のつゆは創業以来まったく同じ味ではありません。
ただし、変えたのは「幹」ではありません。より多くのお客様に「美味しい」と感じていただくための、「枝葉」の変更です。
ゆで太郎は北海道から愛媛、福岡まで店舗がありますが、全国どこで食べても同じ味を提供しています。
関東と関西ではつゆの好みが違うことはよく知られています。それでも私たちは地域によって味を変えません。
東京で生まれたそば屋として、「江戸切りそば」の味を全国で守る。それが私たちの考え方です。実は「江戸切りそば」という言葉も、地方へ出店するようになってから生まれました。
東京にしか店がなかった頃は、あえてそんな呼び方をする必要はありませんでした。ところが地方へ出ると、「麺が細い」「色が白い」「つゆが醤油っぽい」といった声をいただくようになります。

