そして、おかんパンがやってきた
そうした組織の土台の上に、2023年、新製品の「おかんパン」が誕生した。詳細は前編に記載しているが、「売れないだろう」と当初、1日100箱限定で発売したおかんパンは、開店から間もなく棚から消える。そして200箱、300箱と発売数が増加。2024年の春休み、2025年の冬休みシーズンには、1日500箱を売り上げた日もあった。
数字は、はっきりと変わっていった。
コロナ前の2019年に19億円の売上げだったところから、2020年、2021年に17億、15億まで落ち込んだ後、2024年に19億、2025年には約20億円まで回復。営業利益も4000万、7000万円と、コロナ前の水準を超えて過去最高を更新した。
おかんパン単体の売上げも、2025年1年で1億円超え。万博需要もあったが、大半は日々の手土産購入が占めていたという。
退職者が、戻ってくる会社へ
2025年の年末、「おかんパン」は日本PR協会が主催する「PRアワード」のブロンズ賞を受賞する。その申請にあたって、PR担当者から思いがけない提案を受けた。
「ダイヤさん、ちょっと離職率を調べてもらえませんか」
調べてみて、多田さんは驚いた。
厚労省の統計によれば、製パンを含む「宿泊業,飲食サービス業」の平均離職率はが約25%にのぼる。これに対し、ダイヤは2023年で15%、2025年は4.5%だった。業界平均の5分の1以下になっていたのだ。
「実感としては、最近辞める子が少なくなってきたね、ぐらいだったんです。実際に数字として見たことがなくて。それがかなり評価されて、アワードをいただけました」
驚きは、それだけにとどまらなかった。
「最近、辞めた子が戻ってきたんです」
前述した元店長だ。パン以外のものを作ってみたいと言った彼を、「頑張ってきてね」と多田さんは送り出した。しかし1年以上経って、戻ってきたのだ。
「もう一度、正社員で頑張りたいです」
「どうぞどうぞ」と多田さんは歓迎したという。

