日本でもおなじみの玩具チェーン「トイザらス」。日本法人は現在も営業を続けているが、アメリカ本社は2017年に連邦破産法11条の適用を申請し、翌年には米国内の全店舗を閉鎖した。原因としてよく語られるのは、アマゾンなどECの台頭だ。だが、財務コンサルタントの村上茂久さんは「決算書を読み解くと、倒産直前まで本業では利益を出していたことがわかる。『稼げていた会社』が倒産した最大の要因は、買収時に背負わされた“危険な借金”にある」という――。(3回目/全4回)

※本稿は村上茂久『最高の教訓 倒産』(大和書房)の一部を抜粋、再編集したものです。

ルイジアナ州モンローにある、廃墟となったトイザらス
ルイジアナ州モンローにある、廃墟となったトイザらス(画像=Timothy Holdiness/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

日本法人は無事だったトイザらス

親会社が倒産したと聞けば、多くの人は「その子会社も危ないのではないか」と考えるでしょう。資本関係がある以上、運命を共にするのが当然だと思われがちです。

しかし現実には、親会社が倒産しても、事業を継続できる子会社は存在します。トイザらスは、その代表的な事例です。アメリカ本社が破産手続きを行う一方で、日本法人は事業を続けることができました。

なぜ、このような違いが生まれたのでしょうか。親会社と子会社の関係は、どこまで事業の命運を共有するものなのでしょうか。

トイザらスの事例を通じて、資本関係と事業実態のズレ、そして地域ごとに異なる事業構造が企業の存続に与える影響について考えていきます。

かつて、ガラパゴス諸島の動物たちは、外界から隔てられた島の中で、それぞれに異なる姿へと進化しました。この現象になぞらえて、日本では“ガラパゴス化”という言葉が使われています。

世界の潮流とは異なる独自の進化。その象徴の一つが「ガラケー(ガラパゴス携帯)」です。日本独自の高機能を備えながらも、世界標準からは外れた存在でした。

同じように、“ガラパゴス的進化”を遂げた企業があります。米国本体が2017年に破綻した「トイザらス」です。米国では事業が頓挫したものの、日本のトイザらスは米国から独立して事業を継続し、今なお多くの家族連れで賑わっています。同じブランドでありながら、たどった運命はまったく異なりました。

なぜアメリカでは倒れ、日本では生き残ることができたのでしょうか。以下では、その背景を財務の視点から探っていきます。

アマゾンエフェクトの影響

まずはアメリカ本体のトイザらスの売上高と営業利益の推移を見ていきましょう。トイザらスが連邦破産法11条(以下、チャプター11)を申請したのは、2017年9月です。トイザらスは1月決算のため、2017年1月期(FY2016)から過去10年を遡って売上高と利益をそれぞれ見ておきましょう。

まずは売上高からです(図表1)。

トイザらス 売上高推移
出所:『最高の教訓 倒産』(大和書房)

トイザらスの売上高のピークはFY2011(2012年1月期)の139億ドルです。その後、売上高は右肩下がりに落ちていき、チャプター11申請の直前のFY2016には115億ドルまで下がりました。ピーク時のFY2011と比較をすると、17%も売上高は落ちています。

なぜ、これほどまでにトイザらスの売上高は落ちたのでしょうか。トイザらスのチャプター11申請、つまり倒産理由としてよく言われているのがアマゾンエフェクトの存在です。

アマゾンエフェクトとは、アマゾンのビジネスモデルや成長によって、他の産業や企業の構造に大きな影響を与えることを言います。

具体的には、アマゾンの登場により、多くの人はEコマースを通じて買い物をするようになりました。その結果として、リアル店舗の小売売上高が減少することになりました。これこそが典型的なアマゾンエフェクトです。

そして、トイザらスが倒産した理由として最もよく語られるのは、「アマゾンエフェクトにより、大規模型の店舗を強みとしていたトイザらスの売上高が下落した」というものです。実際、図表1でも見たように、倒産直前ではピークよりも17%売上高が下落しています。