トイザらス米法人、利益率は改善していた
ここまでは、あくまで売上高の話です。では、利益はどうでしょうか。図表2は、トイザらスの営業利益と営業利益率をグラフで表現したものです。
図表1で見たようにトイザらスの売上高は確かに減少を続けていました。一方で、営業利益はチャプター11申請の直前のFY2016(2017年1月期)でも意外にも黒字だったのです。それどころか、チャプター11申請までの過去10年間で、営業利益ベースで赤字になったのはFY2013(2014年1月期)の一度だけです。それ以降は、黒字を維持するとともに、利益率自体は改善していったのです。
では、なぜFY2013にのみ、これほどの赤字をトイザらスは計上をしたのでしょうか。その理由は、のれん※の減損を3.78億ドルも計上をしたためです。
※編集部註 買収価格から買収先企業の純資産の時価を引いたもの。
こののれんは、2005年にプライベートエクイティファンドであるベインキャピタル、KKR(コールバート・クラビス・ロバーツ)、そして不動産投資信託のボルネード・リアルティ・トラストによるトイザらスの買収を通じて発生したものです。
しかしながら、トイザらスの業績の見通しが悪化したことで、のれんの減損となり、FY2013に大きな赤字を計上することになったのです。その後トイザらスは、チャプター11直前まで営業利益をしっかりと確保していたことが、トイザらスの業績の真実なのです。
米トイザらスを追い詰めた巨額な支払利息
営業利益ベースでは黒字だったにもかかわらず、なぜいきなりトイザらスはチャプター11を申請するに至ったのでしょうか。それを理解するには、営業利益と当期純利益を比較する必要があります。図表3は営業利益と当期純利益を比較したグラフです。
FY2014(2015年1月期)以降も営業利益ベースでは黒字だったのですが、実は最終利益ベースでは赤字続きというのが実態でした。企業の決算分析や企業価値評価の際には、多くの場合、営業利益もしくは営業利益から派生した指標(たとえば、EBITDA等※)が重視されます。なぜならば、営業利益は本業が生み出す利益だからです。
※編集部註
Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortizationの略。金利支払い前、税金支払い前、有形固定資産の減価償却費及び無形固定資産の償却費控除前の利益を指す。買収価格の目安などとされる。
簡便には「営業利益+減価償却費(+のれん償却などの非現金費用)」で計算します。
一方で、株主に帰属する当期純利益(最終利益)も、もちろん重要です。営業利益ベースでは黒字でも、最終利益が赤字続きならばさすがに財務の健全性に黄色信号が点灯します。
この営業利益から当期純利益までの推移を滝チャートで表現したのが図表4です。ここでは、営業利益と当期純利益の差が最も大きいFY2013で比較してみましょう。
図表4からもわかるように、1.91億ドルの営業利益は4.51億ドルの利息の支払いによって、最終利益段階では大きくマイナスに転じることになっています。これはFY2013だけでなく、他の年度でも同様です。
3倍の借金を生んだ“金融スキーム”
では、なぜこれほどまでにトイザらスは支払利息が多いのでしょうか。その理由は、先述したベインキャピタル、KKR、そしてボルネード・リアルティ・トラストによる買収の際に、レバレッジドバイアウト(LBO)といった負債を多額に活用する金融スキームを用いたためです。
LBOとは、買収先の企業が生み出すキャッシュフローを担保に借入をして、買収する仕組みのことです。3章で解説をした不動産のノンリコースローンとは、取得予定の不動産のみを返済原資にして借り入れる手法でしたが、LBOも同様に買収する企業が生み出すキャッシュフローに基づいて借入を通じて企業を買収する仕組みのことを言います。
このLBOにより、トイザらスは多額の負債を抱えることになり、金利の負担も多くなったのです。
実際、LBOを用いた買収が行われる前のFY2004の長期借入金は18.6億ドルでしたが、買収後のFY2005では、長期借入金は55.4億ドルと約3倍に増えることになったのです。この長期借入金の増加に伴い、金利もFY2004の1.3億ドルからFY2005では3.94億ドルまで増えたほどです。



