人生後半に思い出の品はどう整理するといいのか。医師の鎌田實さんは「身辺整理とは、単にモノを減らすことではない。モノとともに、少しずつ上手に思い出を減らしていくことでもある。思い出を次の世代である息子や娘の邪魔にならない範囲でバトンを渡すためには、一言メッセージを伝えることも大切だ」という――。
※本稿は、鎌田實『身辺整理』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
旅の土産が由来のわからない困ったモノに
思い出は、とても大事なものです。
だからこそ、思い出は、簡単には処理できません。
身辺整理が進まない最大の理由は、じつはそこにあるのかもしれません。
例えば、夫婦ふたりで旅をして、そこで買ってきたもの。
それは、どちらかが生きている限り、なかなか手放すことができません。
「あのとき、あそこへ行ったね」
「これは、あの旅の帰りに買ったんだよ」
そうやって、モノは思い出と結びついて、暮らしの中に残っていきます。
でも、ふたりとも亡くなったあと、息子や娘たちにとってはどうでしょう。
そのモノが、どこで買われたのか。どんな旅の途中でだったのか。
そんなことはわかりません。
モロッコで買ってきたものなのか。
スペインのマドリードで手に入れたものなのか。
アフリカのマサイ族からもらったものなのか。
アイスランドで買ったものなのか。
ガラパゴス諸島のお土産なのか。
ああ、グリーンランドで手に入れたものもあったな……。
持っている本人たちにとっては、ひとつひとつが、かけがえのない思い出の品です。
けれど、それを引き継ぐ家族にとっては、ただ「由来のわからないコマッタモノ」になってしまうこともある。
ここに、身辺整理のむずかしさがあります。

