お客さんの温かい言葉に涙が溢れた

買いに来たお客さんに対し、色変わりの事情を説明。申し訳なさから、ほかのマグロを薦めた。しかし返ってきたのは意外な反応だった。

「有名日本食店の大将は『自分も若いときにたくさんの人に支えてもらって今があるから、その気持ちのお裾分けです』と言ってくださり、私が選んだ境港のマグロを買っていただきました。大将の言葉には涙がじわっと溢れました」

これを機に「遠回りをしても、地道にコツコツ積み上げていこうと、心に刻みました」という高橋さん。「同時に、こうして任せてもらえることが少しずつ増えて、うれしくて幸せ。もっといろいろなことができるようになりたいです」と目を輝かす。

「女性だからではなくキャラで勝負」

デザイナー職から畑違いの魚の世界に飛び込み、キタニ水産入社から8年目を迎えた。今でも「わからない、知らないということが1ミリも恥ずかしいと思わない。『なんでも教えてください』という姿勢でガンガン学んでいきます!」と、ハングリー精神を忘れない。

一方、魚市場という男性社会で働くことについてはこう話す。

「女性だから注目してもらえるのは正直うれしいし、ありがたい。なぜなら、スタートラインがみんなより前だから。ただ、お客さんになってくれるかどうかは別の話。私は女性で売るのではなくキャラで売っていると思っています。私と会うと元気が出ると言ってもらえることが多いから、店頭に立てばギアは常にON状態。元気な挨拶、返事、そして笑顔を欠かさないようにしています」

女性というより「キャラで勝負」と強調する高橋さん。マグロの売り方にもきめ細かい配慮があり、顧客に最大限寄り添った姿勢を崩さない。

「(業務向けではなく)一般のお客さんにはなるべく、いつ食べる予定のマグロなのか、聞くようにしています。その上で、そのとき店にある最適なマグロをお薦めします。また、予算が決まっているお客さんに対しては、その範囲内で最大限喜んでもらえるマグロは何か、常に考えています。売って終わりではつまらないし、寂しい。根底には、目の前の人を喜ばせたい気持ちがあります。そのために自分にできることをコツコツやって、ほかの人が気付かないところまで気を回し、笑顔にできるお客様を増やしていきたい。だから、男も女も関係ない、最後は気持ちだと思います」

店頭で元気よくあいさつし、笑顔で接客
撮影=山本祐也
店頭で元気よく挨拶し、笑顔で接客