JAが在庫を増やしても大丈夫なワケ

しかし、在庫にはコスト(金利倉敷料)がかかる。どの企業もできれば在庫は持ちたくない。

2007年JA農協は米価が低下し売れない在庫を抱え込みそうだと判断したとき、今回とは逆に1万3000円だった概算金(農家に支払う仮渡金)を一気に7000円に下げて農家にJA農協に出荷するなというシグナルを出したことがあった。

このように、JA農協は組合員である農家のために活動しているのではない。自らの組織の利益のために行動しているのだ。これは農水省が国民や消費者のために仕事をしているのではないのと同じである。この時、コメの業界関係者は、農家のための組織であるはずのJA農協がそこまでやるかと思ったという。当時コメ業界でこれは“7000円ショック”と言われた。

しかし、今回はJA農協にとって在庫を増加できる好都合な状況があった。農水省は100万トンの政府備蓄米から70万トンほど既に放出している。残り30万トンの備蓄米在庫も家畜のエサ用に処分寸前のものだ。つまり、農水省が備蓄米の在庫回復と称して少なくとも70万トン、最大で100万トンものコメを買い入れれば、JA農協が積み上げた過剰な在庫を一気に消してくれる。JA農協在庫が政府在庫に置き換わるのだ。JA農協による在庫積み増しのコストを政府が肩代わりしてくれる。農水省の備蓄米買い入れ制度を利用して、JA農協は在庫を大幅に増加して史上空前の米価を実現したのだ。

30kgの紙袋で保管される政府備蓄米
30kgの紙袋で保管される政府備蓄米(写真=農林水産省/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

談合入札ではないか

他方で、農水省としては、通常1万5000円で買い入れていた備蓄米を3万7000円で買い入れると財政負担が膨大なものとなる。今流通している高い25年産米は買い入れられない。このため、9月以降に収穫される26年産米なら安くできるとして、とりあえず26年5、6月その21万トンを入札にかけ買い入れることとした。落札価格は玄米60kg2万円である。

農水省(政府)としては買い入れの入札価格は、安ければ安いほど良い。それが国の会計原則である。それなのに、農水省は買い入れ予定価格(落札予定価格)を2万円に設定した(参考記事)。仮に9月に米価が2万円を切るような事態(例えば1万5000円)になれば、落札者であるJA農協は、1万5000円を農家に払い2万円で政府に売ることで利益を得る。損を被るのは高い価格を払わされる政府、納税者である国民である。

あらかじめ落札の価格水準などJA農協と打ち合わせ済みだったのだろう。米価維持のため、この価格水準で買い入れるよう自民党から申し入れがなされたとも報じられている。そうであれば、官民合同の談合入札行為である。