消費者がコメを買わないから在庫が増えた?
これまでも本連載で説明してきたが24年夏にスーパーから米が消えたのは、23年産米が猛暑の影響を受けて破砕米や白濁米などの被害粒が生じたためだ(参考記事)。本来10月から消費される24年産米を40万トンほど先食いしたために、24年産米が供給される25年秋まで供給不足が継続した。
コメ不足による前年産米の価格上昇を受けて、25年産米は前年に比べ1割(約70万トン)も生産が増えた。本来ならコメの価格は下がるはずなのに、逆に25年産米が供給される25年9月から26年3月まで4000円を超えて高騰した。JA農協による25年産米の相対取引価格は、平成のコメ騒動の際の史上最高の生産者米価2万4000円より、さらに6割も高い3万7000円の米価を実現した。生産が増えるのに価格が上がるという経済原則から離れた現象が起きた。
ここで民間在庫の前年同月比の推移(農水省調査)を見てみよう。在庫は出来秋から次の秋まで減少するので、在庫自体の比較は意味がない。このため、前年との比較をとった。2023年10月から在庫は減り続けたのち、2025年秋から急速に増加していることが分かる。
農水省は25年産米の5月末の民間在庫が223万トン(前年同月比75万トン増加、このうちJA農協がほとんどである集荷業者の在庫は165万トンで74%を占める)で2014年と並び過去最大となった一方で、販売量は過去最低の132万トンとなったと発表した。マスコミは安価な備蓄米や輸入米に需要が流れたため、コメが売れないから在庫が積み上がったと報道している(参考記事)。
しかし、これも重要な説明が抜けた報道だ。コメが売れずに余っているなら、なぜコメの値段はもっと下がらないのかを説明すべきだ。
因果関係は逆
今の750万トン程度の生産に対して2014年ころの生産は850万トンもあったので、在庫量が同じでも在庫率(過剰感)は現在の方が高い。米価引き下げへの在庫圧力は今の方が強いのだ。ところが、相対価格は25年産の3万7000円に対し、14年産は1万2000円と3分の1以下である。今の米価の方が3倍も高いのは明らかにおかしい。
因果関係は逆なのだ。
正しくは、「在庫が増やされた」から「市場への供給量が減少」し、「コメの値段が上がって消費が減った」のだ。「生産=供給が増える」と価格は下がる。しかし、コメ流通の大部分を握るJA農協は「生産=供給」という図式を変えることができる。生産が増えてもそれ以上に在庫を増やせば、市場に供給する量を減少させてコメの値段を上げられるのだ。
今の価格高騰は生産が増えているのにJA農協が在庫を増やすことで起きている人災である。卸売業者はJA農協に高い米価を払っているので、スーパー等に安く販売すると損失を被る。精米価格が3500円程度で高止まりしている原因である。

