世界でも飛び抜けて高い相続税をどう払うか。スーパーゼネコン5社に次ぐ準大手ゼネコンのトップ、戸田建設の創業家一族を相続問題が直撃している。

同社では、元社長の戸田守二氏が今年6月に90歳で死去したのに続き、10月9日に社長、会長を46年間も務めた戸田順之助氏が94歳で死去。これに伴って相続税問題が急浮上し、創業家のみならず社内全体が大揺れなのだ。

戸田兄弟は2代目、戸田利兵衛(創業者の初代利兵衛の養嗣子)の長男と二男。2人は長年にわたり戸田建設を支えてきた。とくに「オーナー」と呼ばれてきた順之助氏の影響力は絶大で、同社の歴代社長は事実上、順之助氏が選んできたと言われている。

焦点は兄弟の持つ戸田建設株の行方。今年3月末現在の有価証券報告書によると、同社の筆頭株主は戸田家の資産管理会社「大一殖産」で発行済み株式総数の11.28%を所有。順之助氏が第2位で9.61%(約3100万株)。第7位の守二氏は2.97%(約960万株)の所有。現在の同社の株価(332円=10月18日終値)に当てはめると、同社株だけで順之助氏は103億円、守二氏も32億円の資産を持っている計算だ。

日本の相続税率は3億円超が50%。単純計算だと同社株だけで順之助氏の遺族は51億円超、守二氏の遺族も15億円以上の相続税を国庫に納めねばならない。相続税は死後10カ月以内に現金で納めるのが原則。「それまでにまとまった金が用意できない場合は延納・分割払いが認められ、それもできないときは国債や不動産、株式の物納になる」(相続税に詳しい弁護士)。

順之助氏の株は長男の戸田秀茂氏(戸田建設取締役)に、守二氏のほうは夫人と戸田守道氏(戸田建設常勤監査役)、長女に相続権があるが、これだけの金額を遺族が短時間に用意するのは困難。戸田建設株を売却すれば相続税を払えるが、これだけ多くの株を市場で売却することは困難だし、そもそも会社が他人に買収される恐れがある。

「そこで、贈与税・相続税を払わずにすむ戸田家関連の公益財団への寄付のほか、戸田家の資産管理会社が買い取るという方法もある」と戸田建設関係者は解説する。株の相続は会社の支配権と絡むだけに一歩間違えば骨肉の争いにつながるケースも。相続の行方が注目される。

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