「義務」なので見返りは難しい

親の介護は同居する長男夫婦がやっていて、次男は盆と正月に顔を見せにくるだけ。親の死後、遺言には「兄弟仲良く半分ずつ」と書いてあったが、長男としては納得がいかない。この場合、長男としては何ができるのか。

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親の介護をしても相続財産は増えない

相続関連の本を読むと、「介護は寄与分になる」と書いてあることが多い。寄与分とは、被相続人(親)の財産の維持もしくは増加に特別の貢献をしたとき、相続分と別にもらえる財産のこと。寄与分が認められれば、相続財産から寄与分を差し引いた残りの財産を相続人で分け、寄与した人は「相続分+寄与分」を受け取ることができる。

寄与分が認められるのは「被相続人の事業に関する労務の提供」や「被相続人の事業に関する財産上の給付」「被相続人への療養看護」などのケースだ。介護も療養看護と同じく寄与分になりうる。

ただし、裁判で介護を寄与分として認めてもらうのは容易ではない。民法には親子間の扶養義務が定められていて(民法877条)、同居して身の回りの世話をするくらいでは扶養義務の範囲内とみなされるからだ。

また身の回りの世話をしていたのが長男の妻だった場合、妻は法定相続人ではないため、そもそも寄与分が認められない。長男自らが会社をやめて介護に専念し、金銭面でも親の生活を支えていたなど、相当に貢献していたケースでなければ寄与分は認められにくいだろう。

しかし、あきらめるのは早い。ケアサービスや老人ホームの代金などを長男が立て替えていた場合は、あえて寄与分を主張しなくても、親に対する債権として回収できる可能性がある。寄与分は経済的支援以外の貢献も含めた寄与をお金に換算するが、最初からお金の貸し借りであれば、債権として扱ったほうが早い。領収書など親とお金をやり取りした証拠があれば、遺産分割協議の前に回収すればいい。