一方、親が長男の献身的な介護に感謝して、遺産の大部分を長男に相続させる遺言を書いた場合はどうか。

このとき問題になるのは次男の遺留分だ。遺留分は、被相続人が遺言によっても自由に処分できない財産の割合をいう。相続人が兄弟2人の場合、法定相続分2分の1×遺留分割合2分の1で、次男は4分の1の財産を最低限相続することが保障されている。たとえば1億円の財産を持つ親が「長男8000万、次男2000万」と遺言を書いても、次男は4分の1にあたる2500万円を相続する権利があるわけだ。

ただ、親が健在で協力を取り付けられるなら、方法がないわけではない。よく活用されるのが生命保険だ。保険金は、原則的に相続財産に含まれない。たとえば相続財産1億円のうち2000万円を生命保険にしておけば、相続財産は8000万円となり、「長男相続分6000万円(75%)+保険金2000万円、次男の遺留分2000万円(25%)」で、次男の遺留分は侵害されずに遺言どおりになる。

長男の子(孫)を親(祖父祖母)の養子にするやり方もある。養子縁組すると法定相続人が3人になるため、次男の遺留分は、法定相続分3分の1×遺留分割合2分の1の約1666万円まで下がる。形だけの養子縁組は裁判で無効とされるケースもあるので、長期にわたり同居して生計を1にするなど、実態をともなわせることが大切だ。

なかには親の銀行口座を他の兄弟に秘密にして、勝手に引き出して自分のものにしてしまう人もいる。これを刑事罰に問うことは実務上は難しいが、相続税がかかる人なら脱税になるし、倫理的にも問題がある。やめておいたほうが無難だろう。

(構成=村上 敬)
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