父方の祖父母の下で生活した実績
配偶者と離婚した場合、別れた後もわが子と暮らしていくためには、民法で定める子の「親権」を得なくてはならない。
父母のどちらが親権者になるか、協議で決められない場合は、家庭裁判所の審判によって決定される。
審判における親権者決定の第一の基準は、「監護の実績」だ。監護とは子の面倒を見ることで、実績という点では母親が圧倒的に有利だ。
「監護の継続性」も重視される。よくある「夫が仕事で不在の間に、妻が子どもを連れて実家に戻ってしまい、そのまま離婚に至った」というケースでは、継続性の観点から、現状優先で母親が親権者とされる確率が極めて高い。特に幼児の場合は、父親には世話が難しいという判断から、母親が親権者とされやすい。
親権者を決めるもう1つの有力基準は、子ども自身の意思である。
法律上、子の年齢が15歳以上であれば、家庭裁判所はその話を聞くことが義務づけられている。審判では子が10歳以上であれば、「両親のどちらと暮らしたいか」を聞き、その意思が尊重される。ただ実際には、子どもの意見は母親の考えを強く反映していることが多い。
こうした事情で、親権は約90%のケースで母親側に与えられているのが現実だ。無論、父方の祖父母が子どもの面倒を見る形で親権を勝ち取ることは可能だ。子どもの意思も尊重されるし、連れ去り方が悪質でなければ、祖父母の下で生活した実績が尊重されるケースもあるだろう。
なお婚姻中は両親双方が親権を持っているので、どちらかが子どもを家から連れ出しても、犯罪とはなりにくい。しかし離婚後、親権を失った側が、親権者から子どもを連れ去った場合は、未成年者に対する略取・誘拐罪が成立し、犯罪となる。