なぜ親を呼び寄せるのは最悪のパターンなのか
「介護が女性の仕事だという時代は終わりました」というのは、NPO法人パオッコの太田差惠子氏である。
「特に“遠距離介護”と銘打ったセミナーの参加者は3分の1が男性です。それだけ切羽詰まっているということでしょうね」
ひと昔前なら故郷の親が倒れた場合、「おまえ、行ってこいよ」のひとことで妻を派遣できたものだが、今では妻の義理の親に対する意識が薄れてきている。また妻自身も自分の親の介護を背負っている場合も多い。
「私だって大変なのよ、自分の親の面倒くらい自分で見なさいよ」といい返されるのがオチだ。
遠距離介護の場合、バカにならないのが交通費だ(図1)。負担してくれる親もいるが、「男性は親からのお金を受け取らないんです。沽券に関わるんでしょうか」(太田氏)。
親が自営、農家の場合は年金がない場合も多い。事実上、無収入である。介護費用はいやおうなく、子供世帯の家計に食い込んでくる。
ならばいっそのこと、親を呼び寄せようかと考える人もいるだろう。だが太田氏は、「それは最悪のパターン」といい切る。
子供が同居している場合、使える介護保険のサービスはかなり制限される。家族の手に負えなくなり、切羽詰まって特養に入れたいと申し込んでも、永久に順番はこない。
「奥さんが仕事を辞めて親の面倒を見ると介護費用がタダになると思うでしょう。でもパートだって、年間100万円稼げる。それがなくなるんですよ。10年続く介護なんてザラです。年間100万円稼げるとしたら、1000万円の損になる。主婦が仕事を辞めて介護するのは、タダじゃない、マイナスになるんです」(太田氏)