遺産分割協議が済むまで銀行預金はおろせなくなる
相続が起きると、遺された家族は忙しい。悲しんでいる間にも、葬儀の段取りに加えてさまざまな手続きが一気に押し寄せてくるからだ。中心となってその役割を担うべき世代として、どんな手続きが必要かは一通り頭に入れておきたい。
まず必要な死亡届は亡くなって7日以内に市区役所・町村役場に提出する。同じ時期に遺言書の有無の確認が必要だ。慌ただしいが、通夜や葬儀で相続人全員が揃ったときに遺言書の報告や遺産分割協議の日程の目安を決めておくとよい。
亡くなったことを金融機関が知ると、預金口座は封鎖され、解除するには遺言書や相続人全員の同意書か遺産分割協議書が必要になることも覚えておこう。
忘れがちだが、年金の資格喪失届け(国民年金の場合は14日以内)や生命保険の手続きも早めに済ませておく。クレジットカードやローン、電話や公共料金など故人が契約していたものは引き継ぎや停止の連絡が必要だ。
遺された財産については、2カ月程度以内に負債も含めて評価額を算出し、財産目録を作成する。知らされていない貯金や借金がある場合も多いから、これは意外に時間がかかるはず。相続財産のうち債務のほうが多いとき(または多いと思われるとき)は、3カ月以内に相続の放棄や限定承認(資産から債務を引いてプラス分だけを引き継ぐ)の手続きを行う。
故人の死亡日までに所得税がかかる場合は、4カ月以内に所得税の申告が必要(準確定申告)。
相続財産の分割については、遺言書がある場合は遺言書が最優先になる。遺言書がない場合や、遺言書に書かれていない財産があるときは、相続人全員が出席して遺産分割協議を行う。話し合って決めた内容に基づき遺産分割協議書を作成し、その後に相続財産の名義変更を行う。
相続税の納付期限は10カ月以内。納付期限までに分割協議が終わっていなければ、法定相続分で相続したとみなして相続税を申告・納付する。
なお、片寄った財産分割を指定した遺言書があったとき、相続人が最低限確保できる遺産の割合(遺留分)を主張するために行う遺留分減殺請求の期限は1年以内となっている。
スムーズな相続を実現させるポイントの1つは、キーマンの存在だ。誰もが一目置く人の応援が得られれば、遺産分割を円滑に進めるうえで大きな力になる。また、何よりも普段から家族のコミュニケーションをとり、両親の意向を確認しておくことが大切なのは言うまでもない。