地方議会のIT化の遅れを指摘した「あぜん……地方議会は今もパソコン持ち込み禁止」(http://president.jp/articles/-/10533)には各所から反響があった。地方議員、特に若手30~40代議員の多くが、パソコンすら持ち込めぬ地方議会の運営ルールに不満を募らせている。理由は簡単だ。「審議中に出てきた用語を検索したい」「行政側の答弁内容のチェックに必要」。官僚が資料を周到に準備して議会に臨む一方、議員側は使えそうな紙の資料をすべて持ち込むしかない。「時には約500枚の資料を2つの紙袋に詰め込んで議場に向かう」(市会議員)のが現状だという。
が、前述の記事で例に挙げた東京・多摩市議会事務局は、パソコンを名指しで禁止こそしていないというが、「パソコンを議場に持ち込む必要があるのか」。
「審議に集中できない」という理由は一理ありそうだが、実際に持ち込みを解禁した市議会は存在する。2002年から議員1人に1台パソコンを貸与、法規集のデジタル化にいち早く着手した登別市や、12年から持ち込みを認めた佐賀県武雄市など。ただし、全国809の市区のうち29、約3.6%にとどまる。
驚くのは首都・東京の区議会だ。某議会改革調査特別委員会の内部資料「議員のパソコン持ち込み使用の可否」(11年10月)によると、議場への持ち込みは23区すべてで禁止。「マイクと混線して通信障害の可能性があるため」(千代田区)。江東区は議員の持ち物検査までできないとして「持ち込みは認めるが使用は禁止」。目黒区は「03年の議員の申し合わせで。なぜ禁止したのか当時の記録がないので不明」という。
この「申し合わせ」がクセ者だ。「議会運営委員会の場で決まる議会内のルールですが、事実上、一会派でも反対すると通りません。持ち込ませたくない人がいるのでしょう。過去の議事録と今の答弁を比べるのにも使えるから、その場で検索・指摘されるのが怖いのでは」(多摩市議・遠藤ちひろ氏)。
文書はすべてPDFなどのファイルにしサーバにアップ、議場や委員会の会議室に無線LANを設置し、文書閲覧を基本的にパソコンやタブレットとすれば、印刷の手間やコストも省ける。議会事務局の仕事が大幅にカットでき、ファイルを有権者がネット上から見られれば、市政の透明化も図れるだろう。