いまや脱原発の旗頭となった感がある小泉純一郎元首相が、相変わらず原発推進論を切りまくっている。11月3日も横浜市内の講演で、原発推進論こそ「無責任」と切り捨てた。
だが、2006年に小泉氏から政権禅譲された弟子の安倍晋三首相は師匠の発言をまったく無視。むしろ首相周辺からは「小泉発言は迷惑そのもの」「何をトチ狂っているのか」などと小泉氏を揶揄するオフレコ発言が相次いでいる始末だ。
「揶揄された小泉氏は“安倍のことを思って言っているのに何だ”と腹を立て、自分の言うことを聞かない安倍首相への不快感も募らせています」
そう話すのは、小泉氏に近いベテラン政治ジャーナリストだ。
「脱原発に舵を切ったほうが国民の広い支持を得られるというのが小泉氏の考えだが、今の安倍内閣は経済産業省出身者が牛耳る“経産省内閣”。アベノミクスが掲げる成長戦略も経産官僚が策定。経産省が原発推進の本丸なので、口が裂けても安倍氏は脱原発を言えない」
しかも、もともと安倍氏はエネルギーの確保が国家の安全保障の要というエネルギー安保論者だという。師匠の小泉氏とは考え方がまるで違うのだ。
全国紙政治部デスクもこう話す。
「人を育てなかった小泉氏が唯一、後継者として育てたのが安倍氏。ところが06年の第1次安倍政権以降、安倍氏は小泉路線の逆を進み、小泉氏との溝が広がってきたのです。例えば、小泉氏は中国の猛反発を承知のうえで首相として靖国参拝を強行。ところが安倍氏は首相になるや真っ先に訪中し、中国のご機嫌をうかがった。また、小泉氏が進めた新自由主義路線で所得格差が広がったとして、安倍政権では負け組救済の再チャレンジ路線を採用した」
小泉氏が声高に脱原発を唱える背景には、首相への当てつけの面もありそうだ。小泉氏は社民党の吉田忠智党首と会談し脱原発で一致するなど、野党幹部との接触を続ける構えだが、アンチ安倍の新党づくりについては「脱原発新党をつくる気はない」と、今のところ否定している。
「だが小泉氏の次男で、党内と国民の人気の高い進次郎代議士は脱原発論者。元首相が触媒役になり、アンチ安倍勢力が結集し、政界再編が進む可能性はある」と政治部デスクは言う。
師弟関係はこじれると怖い。