年明けに本格化する労使間の賃金交渉を前に、例年になく春闘前哨戦がかまびすしい。デフレ脱却に向け、安倍晋三首相が大企業に対して矢継ぎ早に繰り出す賃上げ誘導策に、賃金上昇に慎重な姿勢を崩さなかった経営側がにわかに軟化しだしたからだ。労働側も中央組織の連合が5年ぶりに賃上げの統一要求を復活させる方針を固め、政労使が賃金改善に足並みを揃えたかに見える。ただ、個々の企業には体力に大きな開きがあり、前哨戦のムードがそのまま賃金の底上げにつながるかは鵜呑みにできないのが現実だ。

経営側の変化を印象付けたのは、日本経済団体連合会(経団連)の米倉弘昌会長。10月10日、産業界への賃上げ要請行脚をスタートした茂木敏充経産相との会談で、企業収益改善の賃金への還元要請に対し「報酬引き上げにつなげたい」と応じた。加えて、経団連が毎年春闘に臨む経営側の方針を記す指針に「総報酬引き上げ」を盛り込む意向も確約した。

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