2000年代初めまで「お好みとおまかせ」は半々
江戸前鮨についての著書を複数書いている早川光氏によると、2011年からの10年間で江戸前鮨の世界は大きく変わったと述べており、その最も象徴的な出来事は、「おまかせの注文が当たり前になった」ことだと述べています。
江戸時代の屋台でもそうなのですが、江戸前鮨では、元々、自分の好きな順番で握りを注文する「お好み」が基本でした。早川氏によると、おまかせが生まれたのは戦後になってからだと言います。
これは、この頃になると冷蔵技術や輸送網が発達して、寿司ネタの数がそれまでと比べて格段に増え、客側がネタの名前を覚えきれなくなったことが理由の1つです。
また、銀座や日本橋に高級な鮨屋が増え、接待に使われるようになったことにも影響しているとのこと。
接待の途中でいちいち注文できないため、おまかせで鮨を出してもらうスタイルが浸透していったそうです。そして1980年代のバブル時代、おまかせは一般的になっていきます。
早川氏は、「2000年代の初めの頃まで、お好みとおまかせの比率は半々ぐらいだったと思う」と述べており、さらにおまかせは初心者向けで、食べ慣れた客はお好みで頼むのがカッコいいことであったといいます。
だから世界の中でも一目置かれる存在へ
実は、この頃までのおまかせは、完全にお店に委ねるという感じではなく、おつまみを最初や途中で入れるように頼めるなど、客側の意向を挟める形が一般的でした。
しかし、ここ最近のおまかせは、フランス料理のコースのように、おつまみを含め、出てくる順番や内容を最初から一貫してお店に委ねるスタイルに変化しました。
このようになったのは、ミシュランガイド東京に三つ星の鮨屋も載るようになったことをきっかけとして、外国人が来るようになったことが影響しているといいます。
つまり、言語が分からなくても、鮨を楽しめるようにおまかせを完全コース化したのです。コース料理であれば、外国人も慣れているため、受け入れやすかったことも広がるきっかけになったのでしょう。
現在のおまかせの形は、ただ身を委ね、寿司を感じることに集中できます。寿司におけるおまかせとは、料理の内容を委ねる行為であると同時に、体験として感じることに重きを置ける文化です。
この仕組みがあるからこそ、寿司は世界の中でも一目置かれる存在として認識され続けているのです。


