世界中で寿司が人気の理由は何か。さかなプロダクション代表のながさき一生さんは「江戸前鮨では、元々、自分の好きな順番で握りを注文する『お好み』が基本だった。それが変わったのは戦後になってからで、この仕組みがあるからこそ、寿司は世界の中でも一目置かれる存在として認識され続けている」という――。
※本稿は、ながさき一生『寿司ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
寿司の高い価値は寿司以外に宿る
高級寿司の価格を目にしたとき、多くの人がまず魚の原価を思い浮かべます。しかし、寿司の価値はネタの値段だけで決まっているわけではありません。むしろ、高級寿司が高い理由は、寿司そのもの以外の要素に宿っていると言えるでしょう。
寿司の価値のあり方は、時代とともに変化してきました。昭和、平成、令和。それぞれの時代において、人々が寿司に求めてきたものは少しずつ異なっています。
昭和を象徴する存在として挙げられる寿司店の1つが、「銀座久兵衛」でしょう。
銀座久兵衛は、寿司を、日本を代表する「場の文化」へと押し上げたと捉えられます。政財界の要人や海外からの賓客を迎える場として、寿司は単なる食事ではなく、信頼や格式を示すものとして機能していました。ここでの価値はすでに、寿司の味だけでなく、空間や立地、店の歴史といった総合力にあったといえるでしょう。
平成になると、寿司の価値はより個人へと収束していく流れになります。
その象徴が、東日本の「すきやばし次郎」であり、西日本では「小松弥助」でしょう。この時代、寿司は職人個人の哲学や技術を極限まで突き詰める対象となっていたと捉えられます。緊張感のある空間、妥協を許さない姿勢、強烈な個性。寿司の価値は「誰が握るか」に大きく影響されるようになります。

