寿司屋の価値は何で決まるか。さかなプロダクション代表のながさき一生さんは「近年は、特定の職人名よりも総合力で寿司屋の価値が判断されるが、かつて寿司職人は唯一無二の存在でありスターで、その人みたさに人が集まることもあった」という――。

※本稿は、ながさき一生『寿司ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

寿司を握る職人
写真=iStock.com/RichVintage
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世界中から求められる寿司職人の今

かつての寿司業界では、「技は教わるものではなく、盗むもの」という言葉が当たり前のように語られていました。これはキレイごとではなく、当時の職人たちにとってのシビアな環境からくるものだったようです。

あるベテラン職人は、こんなことを話してくれました。

「昔は職人の数がとにかく多かった。まさに椅子取りゲーム。自分の技を簡単に教えてしまったら、あっという間に居場所を取られてしまう。だから、上の人間は必死で技を隠していたんだよ。うちの大将なんて、一番大事な仕込みの直前になると『今日はもう帰れ!』って見せてくれなかったんだよ」

今としては理不尽にも思えますが、当時はそれが職人として生き残るための現実的な選択でもあったのでしょう。技術はそのまま「飯の種」。簡単に人に渡せるものではなかったのです。

ところが、時代は大きく変わりました。今の寿司職人は、世界中から求められる存在です。人手不足も重なり、確かな技術を持つ職人は、国内外問わず引く手あまた。

かつてのように「耐え忍ぶ修行」のイメージだけで語られる職業ではなくなりました。最近では、高校生の「将来なりたい職業ランキング」に寿司職人が入ることも珍しくありません。

実力次第で若くして独立することもできる。海外に渡れば、日本では考えられないような待遇で迎えられることもある。寿司職人は、夢のある仕事になりました。