高級寿司屋が世界のセレブを惹きつける理由は何か。さかなプロダクション代表のながさき一生さんは「高級寿司の価値は、職人はもちろん、裏方、サービススタッフ、ソムリエなど、職人を支え、場の完成度を高めるための『人』に依存している。そのすべてを『納得できる価値』として価格に昇華させる。この繊細なバランスの上に、高級寿司ビジネスは成り立っている」という――。
※本稿は、ながさき一生『寿司ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
寿司には日本文化がつまっている
寿司は、日本文化を象徴する料理として世界に知られています。しかし、その理由を「魚を生で食べるから」「見た目が美しいから」といった表層的な特徴だけで説明することはできません。
寿司が特別な存在であるのは、その成り立ちや提供のされ方の中に、日本人の価値観や美意識が凝縮されているからです。
まず、寿司には「季節を食べる」という感覚が組み込まれています。旬の魚を重視し、同じネタであっても時期によって扱い方を変える。
これは、自然を人間の都合で支配するのではなく、変化を受け入れ、寄り添うという日本的な自然観に基づいています。海外の方々にとって、この感覚は新鮮に映ることが多いでしょう。
寿司店の空間にも、日本文化の特徴が現れています。カウンター越しに職人と客が向き合う配置は、近すぎず遠すぎない距離感を生み出します。
必要以上に踏み込まない一方で、完全に切り離されることもありません。この「間」を大切にする感覚は、日本の建築や芸能にも共通しています。
さらに、寿司の世界では「言葉にしない理解」が重視されます。寿司店のコミュニケーションは饒舌ではありません。多くを説明せずとも、察し合いながら関係が成り立っていきます。
これは、明確な主張や説明を重視する文化とは対照的で、日本社会における暗黙知の重要性をよく表しています。

