時代の変化に対応できない中高年を待ち受ける末路とは。ノーベル賞作家クッツェーの最高傑作とされる『恥辱』は、モテ続けてきた52歳の白人大学教員が、教え子へのセクハラで告発されても謝罪を拒否し、一人娘の元に転がり込む。すると一人娘に悲劇が襲った。文筆家の堀越英美さんが書いた『あなたのモヤモヤに効く世界文学』(筑摩書房)より、紹介しよう――。
燃えているメモにLOVEの文字
写真=iStock.com/bingokid
※写真はイメージです

時代の空気に乗れた人ほど変化に苦しむ

<お悩み>
なんでもハラスメント扱いの現代にうんざり

ハラスメントになるのが怖くて、会社で若手と気軽に接することができません。
多様性、ルッキズム、人権、個人情報……
正直うんざりです。難しいことを考えずに済んだ昔に戻りたいです。

若いころ、時代の空気になじんで楽しく生きられた人ほど、時流の変化についていくのに苦労してしまうのかもしれません。とはいえ、流れが変わったように見えるその場所は、広い世界から見ればごく狭い領域にすぎない、という可能性もあります。

そこから一歩踏み出せば、ハラスメントの訴えなど通用しない弱肉強食の世界が広がっているのも、また現実の一面です。

ノーベル賞作家クッツェーの最高傑作とされる『恥辱』の舞台は、つい数年前までアパルトヘイト政策があり、差別が根強く残っていた90年代の南アフリカ共和国です。

主人公である52歳の白人男性デヴィッド・ラウリーにとって災難だったのは、彼の職場が時代の変化をもろに受ける首都圏の大学だったことでした。