親は子供に中学受験をさせるべきか。1932年に書かれたディストピア小説の名作『すばらしい新世界』は、胎児を階級ごとに集団分けされた未来社会を描く。金稼ぎとフリーセックスと娯楽だけで回る新世界からは、格差社会を生きる自分が何を重んじているかを考えるヒントが得られる。文筆家の堀越英美さんが書いた『あなたのモヤモヤに効く世界文学』(筑摩書房)より、紹介しよう――。
階級ごとに集団分けされた胎児を徹底管理
<お悩み>
中学受験させる? させない?
子どもを中学受験塾に通わせています。
アルファクラスだったのですが、
勉強で競争するのはいやだと言い出しました。
将来のために続けさせるべきか、
子の意思を尊重すべきか……。
中学受験ブームが過熱するなかで、私立中学を目指す小学生の勉強量は増大する一方です。
大量の知識を子どもに詰め込むため、多くの中学受験塾では子どもたちを成績別に細かくクラス分けして、競争意識を煽っていると聞きます。
アルファベットで人間を選別する未来社会を描くディストピア小説の名作『すばらしい新世界』を読めば、自分や子どもがそうした価値観になじめるかどうかがわかるでしょう。
『すばらしい新世界』の舞台は、ほぼすべての胎児が瓶の中で培養される未来社会です。
家族制度や出産が消滅したこの社会では、生まれた子どもたちは階級ごとに集団分けされ、徹底的に管理されて育ちます。
エリート階級であるアルファとベータの胎児は美しく賢く、労働者階級であるガンマ、デルタ、イプシロンに振り分けられた胎児はわざと醜く愚かになるよう、瓶の中で操作されます。
いわば「親ガチャ」ならぬ「瓶ガチャ」ですべてが決まる世界です。
こう書くといかにも暗い社会に思えますが、人々は洗脳のおかげで意外に明るく暮らしています。

