昔のモテが忘れられない52歳の大学教員
彼を襲った時代の変化の一つが、文学の失墜です。
大学組織の再編成により文学部が廃止され、詩人バイロンを愛するラウリーはコミュニケーション学部に配置転換されます。
以来、教職の仕事にやりがいを感じられません。
加齢も私生活に影を落とします。容姿に恵まれたラウリーにとって、バイロンよろしく多くの女性と情事を重ねることが、人生の「背骨」(バックボーン)だったのです。
ところがこちらも中年になると、昔のようにはいきません。
「ある日、すべてが終わりを告げた。なんの前ぶれもなく、その“力”が失せた」
魅力的な若い女性たちにとって、老いた彼はもはや恋愛対象ではなくなっていました。
自身の性的魅力や文学的美意識が若者にアピールしなくなっても、女遊びはやめられません。二度の離婚を経て独り身となったラウリーは、手近なところでのナンパや買春で当座の飢えを満たしています。
なかでも美しく従順なムスリムの娼婦ソラヤは、ラウリーの大のお気に入りでした。
しかしソラヤとの結婚を夢見るあまり、探偵を使って個人情報を入手して自宅に電話をかけたことで、決定的に嫌われてしまいます。
親子ほど年の離れた教え子に「繁殖を望む」
週に一度のお楽しみを失ったラウリーの次のターゲットは、20歳の教え子メラニーです。道でばったり出会った彼女を自宅に招き入れて手料理をごちそうし「泊まっていきなさい。今夜は一緒に過ごそう」と大胆に誘いをかけました。
素朴で幼いメラニーは、なぜそうしなければならないのかとたずねます。「いと美しきものに、われわれは繁殖を望む」とシェイクスピアのソネット1番の引用で返すラウリー。
親子ほど年の離れた教え子に「繁殖」を望むのはストレートすぎました。メラニーは顔色を変え、約束があるからと家を出ていきます。
ここでやめておけばよいものを、ラウリーは大学の事務室に忍び込み、(またしても)個人情報を入手して電話をかけます。
声からメラニーの不安と幼さを読み取り、「逃がしてやるべきか」と逡巡しつつ、何かに突き動かされるようにデートの約束をとりつけました。ドライブ、海沿いのレストラン、そしてお持ち帰り。
「塞いだ顔で外の海を眺めている」「終始、受け身」「うっすら顔をしかめている」「顔をそむけながら体を離し」といったメラニーの描写は、繰り返し強調される彼女の幼さも含めて、かなり不穏です。
しかしラウリーは浮かれるあまり、その後メラニーの家に強引に上がり込み、押し倒してしまうのです。

