優先課題1:「北京の餌」の罠(危機管理)

これが唯一最も危険な課題だ。彼女の圧勝を受け、習近平は屈辱を感じている。中国共産党は高市氏の勝利を日本の「右傾化」の証と見なしている。

習近平は国内で弱く見えるわけにはいかない。中国はおそらく、尖閣列島での漁船民兵の大群派遣、日本のインフラへのサイバー攻撃、あるいは日本の航空機への攻撃的な迎撃などによって彼女を直ちに試すだろう。『フォーリン・アフェアーズ』誌が指摘するように、北京は以前、台湾に関する日本の姿勢を罰するため、海産物や軍民両用品の禁輸といった経済的強制を用いてきた。

北京は高市氏に無謀な発言を「させたい」のだ。彼らは彼女に軍国主義的演説をさせたり、自衛隊を展開させたりして、中国が「日本が最初の一発を撃った」と主張できる状況を作りたいのだ。これは大東文化大学東洋研究所教授の鈴木隆氏が記述する中国の「統一戦線」戦術に合致する――日本の世論を分断し、国際的に孤立させることを狙っている。

高市氏の任務は「冷たい抑止力」で応答することだ。海上保安庁と自衛隊を展開しながらも、扇動的レトリックを避けなければならない。日本は先に発砲しないが、一寸たりとも後退しないことを示さなければならない。

これには、高市氏がこれまでほとんど示してこなかった規律が必要だ。彼女の短所は、激しいナショナリズムへの傾向だ。もし彼女が餌に食いつき、言動がエスカレートすれば、G7とASEANの目には道徳的優位性を失う。ただ躊躇すれば、中国の強制戦略を正当化してしまうことにもなる。

記者会見する中国外務省の林剣副報道局長=2026年2月10日、北京
写真=共同通信社
記者会見する中国外務省の林剣副報道局長=2026年2月10日、北京

高市首相に告ぐ。「郷に入っては郷に従え」

衆院選挙で有権者は自分たちの役割を果たした。今度は彼女がその役割を果たす番だ。

世界は変わった。2026年の米国国家防衛戦略が明示するように、「ユートピア的理想主義」の時代は終わった。今は「冷徹な現実主義」の時代だ。日本はもはやアメリカの覇権の受動的受益者ではいられない。自らの生存の積極的設計者でなければならない。

高市氏が前述した靖国の罠や賃金・物価の罠に陥れば、国内的失敗となる。また、もしトランプや習近平への対処を誤れば、地政学的犠牲者となる。歴史は彼女の圧勝を記憶しない。彼女が国家を守ったか、その未来を浪費したかだけを記憶する。

この危うい瞬間に当てはまる、もう一つの諺がある。「郷に入っては郷に従え」――村に入ったら、村のやり方に従え。「グローバルなパワーポリティクス」という村では、ルールは厳しく容赦がない。高市氏はそれを素早く学ばなければならない。さもなければ、彼女と日本が代償を払うことになるかもしれない。

【関連記事】
習近平が最も恐れる展開になる…高市首相が切り出せる「日本産水産物の輸入停止」への3つの対抗手段【2025年11月BEST】
だから習近平は「高市叩き」をやめられない…海外メディアが報じた「台湾問題どころではない」中国の惨状【2025年12月BEST】
私には明瞭にモノを言うが、他人には曖昧な言葉を使う…昭和天皇が「総理大臣にしてはならぬ」と語った政治家
バフェットも「現金は危険だ」と警告した…オルカンでもS&P500でもない、インフレ時こそ強さを発揮する「資産」
謝罪も、論破もいらない…金銭を要求してくるカスハラ客を一発で黙らせる"ひらがな二文字の切り返し"【2025年8月BEST】