恋愛感情を利用した投資詐欺
盧の詐欺グループは中年の中国人女性に偽の仮想通貨(暗号資産)投資を持ちかけ、金をだまし取っていた。数週間かけて恋愛感情を持たせ、信頼を得る手口が豚の肥育に似ていることから「Pig Butchering Scam(豚の食肉解体詐欺)」と呼ばれている。
詐欺師たちは約千五百台ものスマートフォンを使って、中国の通信アプリ、微信(ウィーチャット)で偽物のプロフィルを作成した。プロフィルには盗まれたアカウントや携帯電話番号、写真、動画などが使われた。詐欺用のスマートフォンはiPhoneが多く、組織内連絡用は主に中国大手の小米科技(シャオミ)の機種だった。
主なターゲットは三十歳から五十歳の女性で、既婚者や離婚経験者だった。
盧はその理由を「三十歳未満は経済的に(仮想通貨投資するだけの)余裕がなく、五十歳以上はアプリをインストールすることができない。また、既婚者は不貞行為を疑われるのを恐れ、なかなか警察や家族に相談できないため狙われていた」と解説する。
詐欺師は微信でターゲットに友達リクエストを送り、返信があった被害者と数週間かけて親密な関係を築く。やりとりしながら配偶者の有無や出生地、資産状況など相手の個人情報を収集した上で、自身の「豊かな生活」が、仮想通貨への投資収益で成り立っていることを伝え、偽の仮想通貨投資サイトへと誘導する。
最初の利益はエサにすぎない
詐欺師はまず千四百元(約二万八千円)~三千五百元(約七万円)ほどの少額を、偽の仮想通貨投資サイトに入金するよう促す。
「最初は利益が出るようになっており、被害者はこの時点では利益を含めて全額を引き出すことができます。その後、大口取引に誘い込み、被害者が利益を引き出そうとすると、口座が凍結されます。アプリには『取引はマネーロンダリング(資金洗浄)と判断された。保証金が支払われない限り口座は凍結される』『利益に対し所得税を支払う必要がある』などのメッセージが表示され、さらなる追加資金を要求するのです」
このグループは二〇二二年七月から十一月までの五カ月間で、二百十四人の被害者から日本円にして七億円以上をだまし取ったという。
詐欺グループが被害者からだまし取った金は、瞬く間にマネーロンダリング・ネットワークに吸い込まれ、消えていく。被害者がしばらくして詐欺に気づき、銀行や警察に通報しても、多くの場合は手遅れだ。
複雑なマネーロンダリングの仕組みを追った米紙ニューヨーク・タイムズの取材チームは「マネーロンダリング業者は銀行強盗が逃走する際の運転手と同様、犯罪者にとって不可欠な存在だ。彼らがいなければ、戦利品は生まれない」と表現した。


