「もっと日本人を騙せばいい」
近くにいたミャンマー人の少女に声をかけると、「あそこはカジノです。ただ、敷地内に入ったことがないので、何があるのかは分かりません」と言葉を濁した。
だが、付近の住民らは時折、詐欺拠点から逃げ出したとみられる人を目にすることがあるという。国境近くで商店を営むタイ人女性は「数カ月に一度、ミャンマー側から逃げて来てタイ軍兵士の詰め所に駆け込む外国人を見かけます」と語った。
高校生が監禁されていた拠点内には「仕事場」のほかレストラン、売春宿があった。中国人の上司からノルマを課せられながら、八人ほどの日本人と警察官を騙り、日本の家庭に嘘の電話をかける役割を担ったという(※4)。
中国系犯罪組織のターゲットは当初、同胞である中国人が多かったが、最近は欧米人や日本人を狙った詐欺が増えている。
中国政府も自国民が狙われる特殊詐欺の被害拡大に頭を抱えており、ミャンマー国軍やカンボジア政府、タイ政府に取り締まりを強化するよう圧力をかけてきた。
ただ、その標的が自国民でなく、欧米人や日本人となれば話は別だ。中国系犯罪組織はそれを見透かしている。
盧は詐欺拠点から救出された後、中国の公安当局者が口にした言葉が今も脳裏に焼き付いている。「あいつら(詐欺グループ)は、もっと日本人を騙せばいいんだ」
1 “The Scammer’s Manual: How to Launder Money and Get Away With It” The New York Times, 23 March 2025
2 “Huione: the company behind the largest ever illicit online marketplace has launched a stablecoin” Elliptic Research, 14 January 2025
3 “U.S. and U.K. Take Largest Action Ever Targeting Cybercriminal Networks in Southeast Asia” U.S. Department of the Treasury, 14 October 2025
4 「日常逃げたい/付け込まれ」『中日新聞』2025年2月26日朝刊



