数時間で消える詐取金の行方
詐欺グループは、仮想通貨投資詐欺や国際ロマンス詐欺でだまし取った金を、「運び屋」と呼ばれる個人やペーパーカンパニーが管理する銀行口座や仮想通貨ウォレットに振り込ませる。運び屋は詐取金を別の口座へ移動させ、最終的に仮想通貨へ変換。それを「仲介人」へ送り、仲介人が取り分を抜いた後、数時間以内に、すっかり洗浄された金が詐欺グループに届けられる仕組みだ。
詐欺グループはTelegramベースの「闇の取引市場」を通じて、世界中に運び屋のネットワークを抱える仲介人を探す。仲介人は「取引」を始める前に、プラットフォーマーが開設するエスクロー口座に資金を預け入れなければならない。もし運び屋が詐取金を持ち逃げした場合は、この口座に預け入れた保証金が没収され、詐欺グループに渡されるという(※1)。
特殊詐欺向けの取引市場を提供していたプラットフォーマーの一つが、カンボジアに拠点を置く金融コングロマリット「フイワン・グループ(Huione Group)」の一部門「フイワン・ギャランティー(Huione Guarantee)」だった。フイワン・グループ傘下には、カンボジアのフン・マネット首相のいとこが取締役を務める会社もあるとされる。
いたちごっこは続く
フイワン・ギャランティーの取引市場では、マネーロンダリング・サービスや盗まれた個人データ、拷問器具など特殊詐欺に必要なものが販売されていた。同社は当初、取引市場で売買されるサービス・物品には「一切の責任を負わない」と表明していたが、後に「人身売買」「銃器」「テロリズム」に関連するものを含む特定の商取引を禁止する、と変更した(※2)。
米財務省は二〇二五年十月、フイワン・グループが東南アジアを拠点とする仮想通貨投資詐欺や、北朝鮮による仮想通貨窃取の収益を洗浄したとして、米国の金融システムから排除すると発表した(※3)。
ただ、こうした闇の取引市場を提供しているのはフイワンだけではない。中国人のITエンジニアは「フイワン・ギャランティーのプラットフォームを別の会社が買収したと聞きました。それに、この分野には他にも小規模なプレイヤーがいます」と言い、「Tudou」や「JinBei」などいくつかのプラットフォームの名前を挙げた。
当局の対応は後手に回り、いたちごっこが続いているのが現状だ。

